弁護士に聞く終活のススメ #3

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終活の重要なポイントは後継者の育成!弁護士に聞く後継者問題の対策

後継者育成、できていますか?

続けて終活をテーマに書いております。
終活とは、自分の人生の終わりに向けた活動のこと。
この終活には様々な活動がありますが、見ると、論じられているのは枝葉末節ばかりのようです。

終活で大事なことはいろいろありますが、その中でも特に大事なことがあります。
それは、自分にもしものことがあっても困らないように、しっかりとした後継者を育成する、ということです。
これができなくて困っている事例は山のようにあるでしょう。

誰しも、しっかりした後継者をたてて、自分の築いたものを引き継ぎたいはずです。
それによって自分も安心して残りの人生を送れるはずだ、と思っている人が多いでしょう。

ところが、現実はどうでしょうか。
とかく、偉い人の2代目には、いろいろな問題を起こす人が少なくありません。
事業に失敗して1代目の業績を食いつぶした2代目、というのもよく聞く話です。

今回と次回、2回に分けて、後継者問題の対策で心掛けるべきポイントについて書きたいと思います。

後継者を育てたいはずなのに…「公開親子喧嘩」?

このテーマで思い出すのは、某大手家具製造販売会社(A社とします)での「公開親子喧嘩」とまで言われた、親子の紛争です。
A社の創業者B氏は、やり手の社長でした。
全国に大きな店舗を幾つも設立し、ピーク時には営業利益75億円に達していたほどです。
ところがその後、業績は徐々に下がっていきました。

そこで、娘のC子さんが2代目として社長に指名されたのです。
それまでその会社では、店員が顧客と濃密な関係を結び、その家具店のファンにさせた上で、結婚した時のまとめ買い需要に応える形で業績を伸ばしてきました。

C子さんは、そのような販売方法は、これからの時代にはマッチしないと考えたのです。
濃密な関係を作らずに、その代わり気軽に店内に入って自由に商品を見ることができる雰囲気を作るのが大事だ、という方針を打ち出しました。

ところが、C子さんが2代目の社長に就任しても、業績は思うように改善しません。
そのため、創業者B氏が社長に復帰したのですが、その後またC子さんに交代しました。

このような過程で、両者は激しく争うようになり、取締役会や株主総会での多数派形成競争が激化。
その結果、多数派形成に敗れたB氏は、C子さんのやり方に納得できず、A社の人材を引き抜き、別会社を作って出て行ってしまいました。
こうしてA社は分裂してしまったのです。

2代目を育てるのに大事なポイント

どちらが正しいかはコメントしませんが、少なくとも、2代目からすれば、やりにくいことこの上ないはずです。
B氏としては、自分のやり方が正しい、という思いが強く、2代目にそのやり方を強要しているように見えます。
「絶対に自分は正しい」という強い思いが、紛争を激化させてしまいました。

しかし、この世に一方が絶対的に正しい、ということがあるでしょうか。
仮にその時点では創業者の方が正しかったとしても、会社経営は時代の変化に応じて、時々刻々と変化していくものでしょう。
ですから、C子さんが失敗しても任せてあげることで、やがて2代目のやり方が芽を出し、花開くことがあるのではないか、とも言えます。

ある人は「正しいことを言うときは少しひかえめにするほうがいい」という有名な言葉を残しました。
また、ある有名なコンサルタントは、「正しいことを言うことは、正しいことではない」とまで言っています。

これはつまり、人を育てるときは、少々失敗しても目をつぶり、良いことを認めて、褒めて育てることを勧められているのです。

ある育児現場でのこと-子どもを激変させた一言

ある知人の男性から、こんな話を聞きました。

彼は、2歳の子どもを育てているお父さんです。
その子どもが、よく食事中に本棚までフラフラ歩いていって絵本を手に取ることが気になっていました。
食事中に立ち歩きしてはいけない」といくら注意しても聞き入れません。

困ったものだ、と思っていた時、ある人から褒めて育てよ、と言われたことを思い出しました。
彼は、そのアドバイスをもとに、「絵本を見るのは食べ終わってからにしようね」と言い方を変えてみたのです。
そうすると、子どもは食事中に立ち歩かなくなったそうです。

一体どこが違うのでしょうか。
「食事中に立ち歩きするな」という言い方は、子どもの行動を全否定しています。
親の言いたいことだけ言って、子どもの気持ちを分かろうという姿勢がありません。
子どもからすれば、自分は絵本を見たくなったから見ているだけなのに、何でだめなんだ、という不満ばかりが残ります。

これに対して、後者の場合は、自分の気持ちも分かってもらえているので、言われることに耳を傾ける気になるでしょう。
そして、絵本を見たくなっても、食事が終わってからにすればいいんだな、と理解し、受け入れられます。

その知人は、この経験を通じて、子どもだからと軽く見てはだめなんだ、子どもには子どもの考えもあるし、尊重しようとするのが大事だと分かった、と言っていました。

後継者育成ナンバーワンの言葉に学ぶ

先のA社の事例を改めて考えてみましょう。
B氏は、C子さんの気持ちを考えて、C子さんも受け入れ可能な提案をするなどの行動ができたのではないか。
更に言えば、自分の気持ちを抑えてC子さんの立場を思いやることが必要だったのではないか、と言えます。

自分の気持ちを抑えること、これは、世間でよく言われる、堪忍(我慢すること、忍耐すること)です。
日本の歴史上、後継者の育成に最も成功した人、といえば、多くの人は徳川家康の名を挙げるのではないでしょうか。

戦国時代、織田信長はまだ元気なうちに明智光秀の謀反で殺されました。
豊臣秀吉は、最高の権力を手に入れましたが、適切な後継者を育てられないまま、まだ幼い秀頼にすべてを託すしかありませんでした。

ところが家康は、徳川300年の礎を築き、生存中に隠居して権力を2代目秀忠に譲り、平穏な形で生涯を閉じております。
その家康の遺訓がこれです。

人の一生は重荷を負うて遠き道を行くがごとし。急ぐべからず。不自由を常と思えば不足なし。
こころに望みおこらば困窮したる時を思い出すべし。堪忍は無事長久の基、怒りは敵と思え。

聞いたことのある人も多いのではないでしょうか。
堪忍することの大切さ、心に浸みます。
後継者養成に悩むすべての方に贈りたい言葉です。

次回、この言葉を更に詳しく掘り下げてみます。
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