たとえ歩みは遅くとも、堅実に進むほうがいい
ウサギとカメ(イソップ物語)
「カメさん、おはよう。それでも歩いているのかい。世界中で、一番のろいのは君だな。アハハッ」
バカにされても、カメは卑屈にはならなかった。
「じゃ、ウサギさん。僕と競争しようよ」
「えっ、本気かい。僕に勝てると思っているのかい?」
「やってみないと分からないじゃないか」
「そこまで言うならば、受けて立とう」
ウサギとカメは、向こうに見える山の麓まで、競争することにした。
最初、ウサギは全力で走りだしたが、次第に、バカバカしくなってきた。
「足の速い僕が、負けるはずがない。どうせカメは、のろのろ歩いてくるんだ。天気もいいし、ちょっと一休みするか」
自惚れていたウサギは、とうとう、いびきをかいて眠ってしまった。
カメは、自分の力をよく自覚していたので、休まず、無理せず、歩き続けている。
ウサギが目を覚ました時、太陽は、かなり西に傾いていた。
「いけない。寝過ごしてしまった」
あわてて走りだしたが、もう手遅れ。
カメは、先にゴールに着いて待っていた。
確かに、ウサギは足が速い。ピョンピョン飛ぶように走る。しかし、自惚れて他をバカにしたり、努力を怠ったりしていると、やがて大きな失敗をするだろう。
カメは、歩みがのろい。しかし、それは悪いことではない。悲観する必要はない。
たとえ歩みは遅くとも、着実に、堅実に、たえまなく努力していけば、ウサギを超えることができるのである。
(『新装版 こころの道』p.112-115 編著:木村耕一)
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