「ああこれで、ぼくは、英国人の誇りをキズつけないですんだ」彼の誇りとは……

 菊池大麓博士といえば、世界的数学者。
 かつて、イギリスのケンブリッジ大学に留学中は首席を貫いていたが、あるとき、重い病にかかり、長い入院生活を余儀なくされた。
 ために学校の欠席が続いた。

 誇り高き英国の学生たちは、他国のものにトップを独占されている、日ごろのウップンを晴らすはこのときなりと、次席のブラウン君を、こう励ますのであった。
「いよいよ君にチャンスがきたのだ。菊池は病気で講義を筆記することができない。今度こそ、大英帝国のメンツにかけても、君が首席を取ってくれなければ」

 やがて菊池の病気も全快し、学期試験も終わって、発表された成績は、やはり、菊池が一番でブラウンは二番であった。
 ブラウンはしかし、こう満足そうに、一人つぶやいたという。
「ああこれで、ぼくは、英国人の誇りをキズつけないですんだ」

 ブラウンは、病床中の菊池に、毎日、ノートを送り続けていたのである。

 他人の不幸を願い、友の失敗を喜ぶ人の世に、なんと奥ゆかしい友情だろうか。
 他人の苦悩を笑う世に、高潔な紳士の誇りこそ、キズつけたくないものである。

(『新装版 光に向かって100の花束』p.56-57 著:高森顕徹)

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