「ああこれで、ぼくは、英国人の誇りをキズつけないですんだ」彼の誇りとは……
菊池大麓博士といえば、世界的数学者。
かつて、イギリスのケンブリッジ大学に留学中は首席を貫いていたが、あるとき、重い病にかかり、長い入院生活を余儀なくされたために学校の欠席が続いた。
誇り高き英国の学生たちは、他国のものにトップを独占されている、日ごろのウップンを晴らすはこのときなりと、次席のブラウン君を、こう励ますのであった。
「いよいよ君にチャンスがきたのだ。菊池は病気で講義を筆記することができない。今度こそ、大英帝国のメンツにかけても、君が首席を取ってくれなければ」
やがて菊池の病気も全快し、学期試験も終わって、発表された成績は、やはり、菊池が一番でブラウンは二番であった。
ブラウンはしかし、こう満足そうに、一人つぶやいたという。
「ああこれで、ぼくは、英国人の誇りをキズつけないですんだ」
ブラウンは、病床中の菊池に、毎日、ノートを送り続けていたのである。
他人の不幸を願い、友の失敗を喜ぶ人の世に、なんと奥ゆかしい友情だろうか。
他人の苦悩を笑う世に、高潔な紳士の誇りこそ、キズつけたくないものである。
(『新装版 光に向かって100の花束』p.56-57 著:高森顕徹)
『新装版 光に向かって100の花束』書籍紹介
『光に向かって100の花束』は、今日まで多くの人に愛読され、66万部突破のロングセラーとなっています。
古今東西の、失敗談、成功談などから、元気がわくエピソードを集めた100のショートストーリー集。
1話3分で読める気軽さで、面白いだけでなく、人間関係、仕事の悩み、子供の教育、夫婦仲など、人生を明るくするヒントにあふれています。
『なぜ生きる』書籍紹介
子供から大人まで、多くの人に勇気と元気を与えている書籍です。
発刊から20年たった今でも多くの方に読まれています。
忙しい日々のなか、ちょっと立ち止まって、「なぜ生きる」、考えてみませんか?
『なぜ生きる』のお求めは、お近くの書店や、弊社まで(TEL: 03-3518-2126)
お問い合わせください。
話題の古典、『歎異抄』
先の見えない今、「本当に大切なものって、一体何?」という誰もがぶつかる疑問にヒントをくれる古典として、『歎異抄』が注目を集めています。
令和3年12月に発売した入門書、『歎異抄ってなんだろう』は、たちまち話題の本に。
ロングセラー『歎異抄をひらく』と合わせて、読者の皆さんから、「心が軽くなった」「生きる力が湧いてきた」という声が続々と届いています!

