1万年堂出版が開催した
読者感想文コンクールの
入賞作品の一部をご紹介します。

金賞

『親のこころ おむすびの味』を読んで

松井香里さん(30歳・愛知県) 一般の部

私はおむすびが大好きです。初めてこの本を本屋で見た時、軽い気持ちで手に取ってみました。そして「はじめに」を読んで、初めて立ち読みして泣きました。

普段はハードカバーの本は買いません。図書館で借りるか文庫になるまで待ちます。でもこの本はすぐに買って読みたくなりました。そんな私を、一緒にいた主人はあきれてみてました。

私には子供がいます。でも本を読んでいると思い浮かぶのは母の言葉ばかりで、すっかり子供の頃の自分に戻っていました。

私は姉と弟と母、そしてろくに働かない父との5人家族でした。母は朝から晩まで働いて私達を育ててくれました。自分が結婚して母親になってみて、母のすごさがよくわかりました。そして、『おむすびの味』を読んでみて、母もきっとあの時はこんな気持ちだったのだろうと思いました。劣悪な環境の中どんなに貧乏でもいつもお腹いっぱいご飯を食べることができました。今思えば母はいつも最後に皆が箸を置いてから台所で1人食べていました。子供達がお腹いっぱいになってからしか食べられなかったのかもしれません。

父と結婚しなければ、母はもっと幸せになれたかもしれません。でも母は子供達を授かったのだから結婚して良かったとまで言います。どんなに辛いことがあっても子供というのは、それを帳消しにしてしまうものだと思いました。

『おむすびの味』の中には、いつの時代でも深い親の愛情が描かれています。でも、冒頭に書かれていたように、それに気づかない子供もいます。私の弟もその1人です。同じ環境で育っていても、とらえ方はそれぞれです。考え方も違います。父親からみれば、私も親の愛情に気づかない子供の1人なのかもしれません。ただ私は、自分が結婚して親になってみて母親の愛情を深く理解できました。反対に父親の非情さも身にしみました。
それでも、親になった人は全員、子供に対して深い愛情をそそげるものなんでしょうか? 私はそうは思えません。でも、いつかそう思えるようになりたいです。

この本に出会って私は、自分の子育ても愛情さえそそいでいたら道を間違えることはないと思いました。ただ、子供の成長に合わせた接し方で、変わらない愛情で、自分が母から受けたように、子供を育てていきたいです。

先日、私が病気で入院した時、この本を持って入院しました。病室で読むなら心が温かくなる本が良いと思って……。そして、入院している間母は毎日、遠い病院に通って私の世話をしてくれました。私が寝ている間母が退屈かと思って『おむすびの味』の本を読むように勧めてみました。私は母が本を読んでいる所を見たことがありません。ダメ元で勧めてみたけど、目が覚めたら泣き顔で本を読んでいる母がいました。私が目覚めたことに気づいた母は照れくさそうに笑って、
「昔を思い出すね」
と言っていました。きっと母も祖母の深い愛情を感じていたのかもしれません。

私もいつか、子供が大きくなったらこの本をそっと差し出してみようと思います。