1万年堂出版が開催した
読者感想文コンクールの
入賞作品の一部をご紹介します。

銅賞

『思いやりのこころ』を読んで

松永梢さん(17歳・静岡県) 高校生の部

「思いやりのこころ」と聞いて、あなたはどんな心を想像しますか? 思いやり……それは、相手の立場に立って考え、行動する事ではないでしょうか?

この本には、昔生きていた人の相手を思いやる話が書いてあり、「昔の人は、どうしてこんなに相手を思いやれるんだろう」と感心しながら続きを読んでいきました。すると最後に、読者の方の「心にしみた親切」ということで、とても感動的な話が書いてあり、「今、生きている人の心の中にも、思いやりの心があるんだな」と安心しました。
この本は、誰かに親切された人からの目線で書かれています。親切にされた人は、嬉しく幸せに感じ一生忘れない出来事として、心に刻むと思います。しかし、親切にした側も、嬉しく幸せに感じ一生忘れない出来事として、心に刻むのではないでしょうか?

ある日、私は母と電車に乗りました。乗った時は、空いている席がなく、母と2人で立っていましたが、運良く目の前の席が2つ空き、座ることにしました。それから数分後、私が携帯電話をいじっていると、母が小さな声で「おばあちゃんに席を譲ってあげなさい」と言いました。顔を上げてみると、私の左横におばあちゃんが立っていました。私は、「おばあちゃんに席を譲ってあげなくちゃ」と思いましたが、恥ずかしがり屋な私はすぐに立つことが出来ませんでした。でも、「揺れる電車では、立っているのは大変だ」と思い、勇気を出して言いました。

「ここ、どうぞ」

するとおばあちゃんは、「すみません。ありがとう」と笑顔で言ってくれました。私は、顔から火が出そうなくらい恥ずかしかったですが、おばあちゃんのその一言で恥ずかしい気持ちはなくなり、心が嬉しい気持ちでいっぱいになりました。

偶然にもそのおばあちゃんと降りる駅が同じで、おばあちゃんが席を立った時に、またお礼を言われ、電車を降りた後にも「ありがとうございました」と言われました。私はただ、席を譲っただけです。それなのに、おばあちゃんは3回もお礼を言ってくださいました。席を譲っただけでこんなに感謝され、あの時勇気を出して言って良かったと思い、たくさん感謝された私は幸せだなあと思いました。

「思いやり」、それは親切にされた側も親切にした側も、幸せになれるものだと思います。今の世の中、自分のことだけしか見てない人はたくさんいます。しかし、1人1人がほんの少しでも、家族を、友達を、近所の人を見てあげられたら、世の中変わると思います。困っている人がいたら声をかけてあげたり、そっと手を差し伸べてあげたり……。別に、凄いことをしなくても小さなことでも、親切にされた側はとても嬉しいと思います。

私は、この本に載っていた方達のように、もっと優しくなれたらいいなと思いました。そして、この本の中で最も心に響いた吉田兼好の言葉、「他人の評価や言葉を気にせずに、自分は自分らしく、自らの信じる道へ突き進め」という言葉を忘れずに生きて行こうと思いました。