緊急事態宣言が解除され、ようやく日常生活は落ち着きを取り戻してきているようですが、心の中は、毎日ちょっとしたことでイライラしていませんか?
そんな怒りの心をコントロールする方法について、心療内科医の明橋大二先生は、どのようにアドバイスされているでしょうか。
このたびは明橋大二先生の最新刊『こころがほっとするアドバイス』の中から学びたいと思います!
「怒りをコントロールする方法はありますか?」
【悩み相談1】
ちょっとしたことでイライラしてしまいます。自分自身で怒りをコントロールするために、できることがあれば教えてください。
そうなれば、仕事も子育ても少しは楽になると思うのですが……。【悩み相談2】
出産してから心身に余裕がないのか、イライラしがちで、主人にも言葉がきつくなってしまう自分がとても悲しくなります。
子育ても大事ですが、自分自身の優しい心を育みたいです。何かアドバイスをお願いします。
Dr.明橋の「こころがほっとするアドバイス」
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イライラしてしまう原因は何か?意外と自分でわかっていないことがあります。
私のところに相談に来る人の中にも、「ちょっとしたことでイライラしてしまう」「カッときてしまう」という悩みは結構あります。
子育てでも、会社でもそうですが、やはり夫婦関係でイライラすることが多いですよね。私も怒られる立場としてよくわかります(笑)。
草食動物タイプ? 肉食動物タイプ?
「どうしたらイライラしないですみますか?」
ということですが、まずイライラする背景には、体調が関係していることが多いです。寝不足だとか、お腹が減っているとか。
ちなみにお腹が減ると、イライラする人と、眠くなる人がいますが、皆さんはどちらですか?
眠くなる人は、草食動物タイプだと思っています。草食動物は、冬になって食べ物がなくなると冬眠しますので。
イライラする人は、肉食動物タイプだと思います。ライオンなど肉食の動物は、お腹が空くと狩りに出るため、攻撃的になります。
だから、お腹が空くとイライラするか、眠くなるかで、その人が肉食動物タイプか草食動物タイプか、判断できるということです。もちろんこれは、半分冗談ですけどね。
だけど、そういう体調が関係していることは多いと思います。
あとは、痛みがあるとき。私は口内炎にときどきなるのですが、それが3つも4つもできたときは、それだけでイライラしますね。
また、女性ですと生理前。これは男性には想像できないのですが、穏やかに話しているつもりなのに、すごくイライラと噛みついてこられたり、いつもと違うと感じたりするときがあります。
それが生理が始まった途端、スーッと落ち着いてくる。
だから、体調が悪いのは仕方のないことですが、どこかで自覚することは大切です。
「今日は寝不足だからイライラしやすいぞ」とか、
「お腹が空いてイライラするかもしれないから、早めにご飯を食べよう」
あるいは、「生理前だからあまり近づかないで」とかね。
やはりそういった体調を自覚するというのは必要で、特に睡眠は大事じゃないかと思います。
まずは、体調をコントロールすることだと思います。
場面を切り替える方法を考えておく
次に、自分自身で怒りをコントロールすることです。
私は、おおらかなほうというか、そんなに短気ではないと思っているのですが、こういう仕事をしていると、中には、人の気持ちを逆なでするのが上手な人に出会います。
ピンポイントで、これは言われたくないということを突いてこられます。
たとえば、患者さんの中で、
「精神医学って、一番医学の中で進歩していないんですよね」
などと言ってこられたりします。
たしかにそうかもしれない。他の内科や外科は進歩しているのに、精神科は50年前の薬を使っていたりします。
だけどそれは、おまえは全然治せないじゃないか、と言われたみたいな気がしてカチンとくるわけです。
一番言われたくないことをズバッと言われると、やはりピキッとなるんですよね。
そういうことを、「いや、そんなことはない」と返しても、ケンカになるだけですし、患者さんとしては、何か揚げ足を取ろうとしているのではなく、自分が苦しいから、その怒りをこちらに向けてきているだけだと思います。
それをまともに受け取ってしまうと、本当にエスカレートして、怒鳴り合いになって、「出て行けー!」ということにもなりかねません。
だからそういうときは、水を一杯飲むとか、ちょっと席を外すとか、リセットするために少し場面を変えると、気持ちが変わることもあります。
お家なら、「ちょっとトイレに行ってくる」と言って、トイレに座って深呼吸をする。
あるいは、「空気が悪いから、入れ替えてくるわ」などと言って、窓を開けて外の空気を吸う、という方法もあります。
子どもが赤ちゃんでなければ、少し外に行って散歩したり、車で10分ほどドライブしたりするのもありだと思います。
そういうふうに、ちょっと場面を切り替えてみると、それだけでリセットされることがあります。
深呼吸して、
「何でこんなに怒ってるんだろう」
「こんなことで怒っても仕方ない」
と考え直してみると、少し冷静に聞けたりするわけですよね。
ですから、イライラしたときは、まともに向き合わない、少しシチュエーションを変えてみることがいいんじゃないかと思います。
重要な人だからこそ、腹が立つ
質問されている中に、「主人にも言葉がきつくなってしまう」とありますが、人間というのは、相手が自分にとって重要な人だから腹が立つということがあります。
自分にとってどうでもいい人に腹が立つことは、そんなにないですよね。
まったく縁もゆかりもない人が、ぶつくさ言っていても、全然腹は立たない。
つまり、腹が立つのは、その人が自分にとって重要な人だからです。
それは子どもだったり、夫だったり、だから、私はよく言うんですが、子どもにイライラしてしまうのは、それだけ子どものことを思っているから、それだけ子育てをがんばっているからです。
夫にイライラしてしまうのは、それだけどこかで頼りにしているからなんですよね。あきらめてしまったら、腹も立ちません。それは末期的な状態で、最近怒られなくなったなぁという旦那さんたちがいたら気をつけてください(笑)。
大事な人だからこそ、腹が立つんですよね。
この方はさらに、「自分自身の優しい心を育みたいです」とも言われています。
大切な人にきつい言葉を投げかけてしまって、自分でもとても悲しくなるとのことですが、自分をふり返って悲しくなるのは、それこそが、私は優しい気持ちだと思うんです。
イライラする一方で、ちゃんと優しい心をもっておられるということです。
それがついついイライラしてしまうのは、やはり疲れていたり、ひとりで全部抱え込んでいたりすることからなので、あえて周りに助けを求めて、周りの力を借りながら、やっていかれたらいいのではないかと思います。
夫に「何でやってくれないの!」と言えば、相手も不機嫌になりますが、やるべきことを具体的に言って、やってくれたら「ありがとう」と伝えていけば、お互いに楽になると思います。
「何でそんなこともわかってくれないの?」と言いたくなりますが、男性にはわからないんです。
わざと無視しているのではなく、本当にわからないのです。
夫としては、「そんなことなら、言ってくれたらよかったのに」とよく言いますが、それは本当なんですね。
ですから、言葉にして「これとこれをやってね」と言って、やってくれたら「ありがとう」と伝えていく。そうすれば、お互いに楽になるんじゃないかと思います。
「夫も疲れているだろう」とへたに遠慮してしまうと、がまんして、それがイライラになって爆発してしまいます。
そうなるよりは、遠慮しないで「お願いね」と言っていけばいいと思います。
もちろん、男性も妻をイライラさせた失敗から学ぶ、痛い思いから察知する努力が必要なんですけどね。
ご紹介した新刊
今回、ご紹介しました「怒りをコントロールする方法」は、明橋大二先生の最新刊『こころがほっとするアドバイス』に掲載されています。
このような”全部で18の悩み相談”と、アーティストの歌詞をとおした明橋先生の深いぃエッセイ&対談を収録!
心療内科医として、数え切れないほどの相談に答えてこられた、明橋先生の”言葉のエッセンス“にあふれた1冊です。
本来の優しいあなたを取り戻すきっかけに、ぜひお役立てくださいね。