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他人と比べて欠点を気にしてしまう原因は?コンプレックスを克服する4つの方法

今日は特に他人と比較する、比較される機会が増えています。そうすると、自分の欠点が浮き彫りになって、そのことに苦しんでいる、という方は多いのではないでしょうか。

完璧な人間はいませんし、誰しも欠点はあります。
自分に至らないところがあるのは当たり前で、それにこだわる必要はありません。

しかし時として、生活に支障をきたしてしまうほど、欠点がすごく気になることもあります。いわゆるコンプレックスですね。

こうなると、行動を回避しがちになり、自由に生きることが制限され、コンプレックスに人生の楽しみが奪われてしまいかねません。

この記事では、コンプレックスを抱いてしまう原因と、コンプレックスを抱えることの問題点、そして、コンプレックスを克服して人生を心から楽しむ4つの方法をご紹介していきます。

人はあらゆることにコンプレックスを抱く

あなたはどんなことに引け目を感じているでしょうか?

実際のところ、人はあらゆるものにコンプレックスを抱いています。

フランスの雑誌『心理学』が実施したアンケートによると、回答した人の70%が「教養がないこと」、69%が「きちんと話ができないこと」、67%が「知性が欠けていること」、54%が「容姿が劣っていること」にコンプレックスを持っていることが分かりました。

容姿についてはさらに、「太りすぎている」「髪が薄い」「背が低い」「鼻の形が悪い」など、身体のどこにコンプレックスがあるかに分けられます。

職歴や学歴、性格や態度にコンプレックスを感じる方もあるでしょう。

なぜコンプレックスを抱くのか?

コンプレックスを抱くようになった原因はさまざまです。

他者の言葉や過去の経験からの影響

家庭で「おまえのここがダメだ」「それがよくない」などと指摘を受け続けてきた、学校でクラスメートから欠点(だと思っていること)をからかわれた、または欠点(だと思ってること)が原因で人から受け入れてもらえないという経験をした、などです。

あるいは、自分は欠点と思っていなかったことに、身近な人がひどく悩んでいるのを見て、「これはいけないことなんだ」と思ったことはないでしょうか。

家族や友人、恋人と接する過程で、「自分のここがダメだ」と思い込み、コンプレックスを抱え込むようになったと考えられます。

社会からの影響

フランスの精神科医であるクリストフ・アンドレ氏は、「現代は〈社会がシステム的にコンプレックスを助長している時代〉だといえる」と指摘しています。

現代ほど、コンプレックスが刺激される時代はないということですね。

その原因の1つに「テクノロジーの発達」を挙げています。

スマホカメラやSNSの影響で、自分の姿を見る機会が多くなったのとともに、テレビやインターネットで、完璧に近い美しい男性・女性を見ることも多くなりました。

すると、イヤでもそれらの人と自分とを比較し、容姿にコンプレックスを抱きやすくなってしまいます(ちなみに、容姿に関するコンプレックスは女性だけでなく、男性にも表れていることが証明されているそうです)。

ポジティブ心理学者のバーバラ・フレドリクソン氏(ノースカロライナ大学教授)は、メディアの悪影響について、こう語っています。

メディアは、家庭や学校が教えるよりはるかに強力に、何を期待するべきか、何が「ふつう」なのかを人々に教えようとします

とくに若者は、「自分はその立場に達していない」などと簡単に思い込んでしまいます。

これが恥の感情を作り出し、仲間との交流を困難にし、日々の楽しみを奪うのです。

(『ポジティブな人がうまくいく3:1の法則』バーバラ・フレドリクソン著 日本実業出版社)

メディアは、本当は「ふつう」でないことを「ふつう」であると教え、人々はその基準に達していないことに落ち込んでしまうのですね。
その裏には、不安を煽って商品を買わせようとする意図があるでしょう。

このように、過去に見聞きしたことや経験、メディアからの影響により、コンプレックスが形成されていくのです。

コンプレックスを克服するヒント

さまざまな影響によってコンプレックスを抱えることで、人は自分のコンプレックスを刺激しないよう行動を避けるようになります。

例えば、教養がないことをコンプレックスに思っている人は、教養のありそうな人の前では無口になってしまいます。
容姿にコンプレックスがある人は、人との関わりを極力避けるようになるでしょう。

そうなれば、人や物との出会いや、楽しいおしゃべりなどの自由が奪われてしまいます。

このような問題を解決するにはどうすればいいでしょうか。

ここで大切なことは、欠点・コンプレックスだと思っているものは、その多くは主観にすぎない、ということです。

先に紹介したクリストフ・アンドレ氏は、身長140センチの男性を例に挙げています。

身長が140センチと聞くと、平均身長より低く、コンプレックスを抱えてしまいかねないと思います。
ところがその男性は、見事にコンプレックスを克服し、スーパーで自分よりも背の高い女性に、高い位置にある商品を取ってもらって楽しんでいるそうです。

コンプレックスも、見方によってはその人の特徴、アピールポイントにすらなり得るのです。

アドラーの言葉から知るコンプレックスへの対処

『嫌われる勇気』で一躍有名になったアドラー心理学でも、私たちは物事に独自の意味づけをしている、と教えられています。

自分の特徴を、弱み・欠点と見ることもできれば、強み・長所として受け止めることもできるのですね。

アルフレッド・アドラーに

大切なのは、何が与えられているのかではなく、与えられたものをどう使うかである

という言葉があります。

『嫌われる勇気』に引用されている言葉の中でも、特に印象深い言葉かもしれません。

今ない物を手に入れるための努力もとても大事なことです。しかし、どうしても入手不可能なものもあります。

架空の「ふつう」と比較して、「あれも足りていない、これもない」と、ないものねだりで悩んでいる私たちに、「今与えられている物の使い道を考えてみよう」と言っているのだと思います。

アドラー心理学は「使用の心理学」ともいわれています。

自分の特徴を、行動を回避するために悪く意味づけするのではなく、前向きな行動につなげるために、強みや長所として意味づけしていくべきと教えられているのです。

コンプレックスを抑え、克服する4つの方法

以上の点を踏まえ、コンプレックスを抑えて、克服する方法をご紹介します。

①コンプレックスを持つに至った原因を理解する

コンプレックスを持つに至ったのは、過去の経験や両親や友人、恋人からの言葉、あるいはメディアからの影響であるとお話ししました。

では、自分は何が原因でコンプレックスを抱くようになったか、振り返ってみましょう。

あの人の言葉は傷ついた、あの経験は恥ずかしかったという過去も、今の自分から見れば、「あの人の言うことは正しいといえない」「当時はひどく悩んでいたが、それほど深刻な問題ではなかったかもしれない」「あの経験は、ただ恥ずかしいだけでなく、学べることもあった」と思えるかもしれません。

そうして自分という人間を定義し直す(リフレーミングする)ことで、コンプレックスを抑え、気持ちも前向きにすることができます。

②メディア・ダイエットをする

また、メディアが「ふつう」という価値観を作りだし、それと比較することでコンプレックスを抱いてしまうとお話ししました。

ゆえに、メディアなどの社会的な影響から自分を守ることが、コンプレックスの助長を防ぐために必要です。

バーバラ・フレドリクソン氏は「メディア・ダイエット」を勧めています。
テレビやSNSを見る時間を減らしたり、漫然と見ずに目的や時間を定めて見たりすることです
こうすることで、メディアからの過度な影響をシャットダウンできますね。

また、クリストフ・アンドレ氏は、あなたを架空の「ふつう」に近づけようとして商品を勧める広告に対して、「それは自分に本当に必要なのか?」と自問してみることを勧めています。

自問することで、冷静になり、実は広告にコントロールされていたことにも気付けるのです。

③他の人を観察してみる、話を聞いてみる

自分と同じような欠点を抱えていそうな人が、どのように過ごしているかを見てみるのも効果的です。
その人から話を聞いてみるのもいいと思います。
物事の前向きな受け止め方を知るきっかけになるでしょう。

関連して、多様な人と接点を持つことで幸福度が上がる、という研究結果があります(『実践 ポジティブ心理学 幸せのサイエンス』より)。

それは、さまざまな人の、さまざま考え方を聞くことで、自分の弱み・コンプレックスが相対化され、悩みの小ささが分かり、楽観的になれるからだといわれています。
できれば利害関係のない人たちとの関係を持っていきたいですね。

④欠点を長所とみる

コンプレックスは、欠点がすごく気になってしまった状態です。しかしそれは「私はここがダメだと思う」という主観的なものでした。

ゆえに意味づけを変えれば、コンプレックスも武器にすることができます。

精神科医で、アドラー心理学のカウンセリング指導者でもある野田俊作氏は、

暗い部分と明るい部分とは、欠点と長所とは、実は同じものなんです。違うものではない。ただ名前が違うんです。同じものでも違う名前をつければ違う使い方が発見できる

(『アドラー心理学を語る2 グループと瞑想』野田俊作著 創元社)

と言っています。

欠点と長所は単に名前が違うだけ、貼ってあるラベル名が違うだけで、実は同じもの。ラベルを貼り替えれば違った使い方ができるのです。

例えば、「私はとても暗い性格なんです」という人に対して、あなたならどう励ますでしょうか。

野田さんの場合は、「あなたはいつも他人の気持ちを考えて暮らしておられるんですね。つまり、思いやりが深くて、謙虚で、感受性が豊かで、親切なんですね」と言い換えるそうです。
語彙力の高さに感嘆しますね。

このように、肯定的な表現にすることで、その女性は自分の性格をそれまでと違って見られるようになります。
自信も出てくるでしょう。
そうなれば、他の物事も、これまでと違ってポジティブに捉えられるのではないでしょうか。

「優柔不断」→「慎重である、軽率な行動をしない」

「融通が利かない」→「几帳面でしっかりしている」

「身長が低くてスタイルが良くない」→「小柄で安心感を与えられる」

以上のような、ぜひ肯定的な意味づけに挑戦してみてください。

 

【参考文献】

『自己評価メソッド』(クリストフ・アンドレ著 紀伊國屋書店)
『ポジティブな人がうまくいく3:1の法則』(バーバラ・フレドリクソン著 日本実業出版社)
『嫌われる勇気』(岸見一郎・古賀史健著 ダイヤモンド社)
『実践 ポジティブ心理学 幸せのサイエンス』(前野隆司著 PHP新書)
『アドラー心理学を語る2 グループと瞑想』(野田俊作著 創元社)