セルフ・コンパッションから学ぶ自己肯定感を育むセルフケア #3

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自己肯定感が低くなっているときのセルフケアと、孤立しないための方法

仏教の慈悲にヒントを得た、欧米で話題の「セルフ・コンパッション」。
自分を思いやり、自分に優しくする種まきとして、3つのキーワードが紹介されています。

  1. 自分に優しくする
  2. つながりを大切にする
  3. 「今」を大切にする(マインドフルネス)

今回は、2番の「つながりを大切にする」についてです。

※前回の記事はこちらをごらんください。

自己肯定感が低いときは孤立しやすい傾向がある

自己肯定感が低いときの特徴として、「自己批判しやすい」ことを前回説明しましたが、他にも「孤立しやすい」ということもあります。

苦悩は孤立を生み、孤立は苦悩を深める」という言葉もあります。

自信がなくなると、自分の嫌なところばかりが気になり、周りの人のいいところと比べ、ますます自分のことが嫌いになりがちです。
すると、誰も自分のつらさを分かってくれない、安心できる居場所がないような孤独感が心に住み着いてしまいます。

自分が無価値であると感じることは、他者から分離され、人生から分離していると感じることと関連している。

これは、不完全な自分には所属する場所がないと考えてしまうからである。

自分が不完全であると感じるほど、孤立して脆弱であると感じる悪循環に陥ることになる。

(『セルフ・コンパッション』より)

苦しみはさまざまな意味で「つながりを断つ」といわれます。
周囲の人とのつながりを断って孤立しやすい。
現在と未来のつながりを断ち、希望が持てない。

生きるとは、つながりを大切にしていくことといえるのかもしれません。

自分自身に「頑張ってきたね」と声をかけよう

心が弱り、孤立してしまうと、ますます「自分が弱いからだ、自分はなんてダメなんだ」と、自分を責めがちです。

しかしそれは弱いからでも、ダメな人間だからでもありません。

今どれほど「自分はダメだ」と思っているとしても、それは、「自分はそれほどダメだ」ということを意味するのではなく、「そう思うに至った事情がある」という意味なのです。

(『自己肯定感、持っていますか?』より)

人は、よくも悪くも環境の影響を受けて生きています。
善い縁に恵まれるか、そうでないかで、人生は大きく変わります。
選べる縁もあれば、選べない縁もあります。

自己肯定感が低いならば、それは「自分は大切な存在だ」「自分は自分でいいんだ」と思えないような経験をしてきた結果であり、どうしようもできないことが多かったのではないでしょうか。

自分のことを否定されたり、傷つくことを言われれば、自信を失い、人を信じられなくなることもあります。

「そんな中、よく生きてきたね」と言ってもらったこともなかったならば、ぜひ今からでも、自分に「よく頑張ってきたね」と言葉をかけてみてはいかがでしょうか。

「普通になりたい」という願望の落とし穴

孤立感は「私も“普通”になりたい」という形をとることもあります。

「自分は“普通”じゃない」
「“普通の人”よりも弱い、劣っている」
という自己評価の低さから、「普通」にあこがれるのでしょう。

「普通の人」が「完璧な、理想的な人」に見えるのかもしれません。

「普通の人」とは、どんな人でしょうか?
いいところもあれば悪いところもある、調子がいいときもあれば、悪いときもある。それが「普通」ですよね。

自己肯定感が下がっているツラいときほど、
「自分なんかのために他人に迷惑をかけてはいけない」
「助けを求める価値もない」
というワナにもハマりやすいので注意が必要です。

誰かにいじめられたり、否定されたりすれば、怒ったり、落ち込んだり、人間不信になるのは普通の反応です
また、つらいときは誰かに助けてもらうのも普通です。

普通の人とは、「完璧な、理想的な人」ではなく、いいところも悪いところもあり、大変なときには支え合いながら生きていく人のことではないでしょうか。

誰もが、失敗もするし、挫折もします。
「だから、こんなことで弱音を吐いてはいけない」と考えてしまうのは、自分に優しくないですよね。

人はみな苦しみを抱えながら生きている。だから、今の自分の苦しさを分かってくれる人はきっといるし、弱音を吐いてもいいのです

あなたが頼れる人の見つけ方

助けてくれる人はきっといます。まずは3人に声をかけてみてください。
真剣に受け止めてくれる人はきっといるはずです。

その際に、どんな人に頼ればいいのか、「信頼できる人」には少しポイントがあります。

否定せずに聞いてくれる人

まずは、否定せずに聞いてくれるかどうか。
それは、よいとか悪いとか評価するのではなく、まずは気持ちを聞いてくれる人でないと、安心して頼れません。

話を聞いて大げさに反応しない人

そして、話を聞いて不機嫌になったり、泣いたりしない、大げさに反応しない人です。
その人自身が話を受け止めすぎて倒れてしまうんじゃないかと、心配せずに済む人がいいです。

淡々と聞いてくれて、さらっと「正直に話してくれてありがとう」と言ってくれると、相談しやすいですよね。

人に相談するように勧めてくれる人

また、他の人に相談することを勧めてくれるかどうかも大切です。
人に頼ることの大切さを知っている人は、実際に自分が助けを求めることができるはずです
悩みを抱え込まず、適度な距離を保てることはお互いにとって重要なことです。

自分を守るために、自分に合ったよい縁を自分で選ぶことは、とても大切なことです。

今なら、ツイッターなどSNSで(匿名で)自分のつらさを吐き出すのもいいと思います。
きっと味方がいるはずです。共感してくれる人は少なくないと思います。

つらさを上手に説明できなくても大丈夫

精神科を受診される方は、相談するのが苦手という方が少なくありません。

それは、「話をしても分かってもらえないし、これ以上傷つくのはイヤだ」と心を閉ざすことで、必死に自分を守ろうとしているようにみえます。

では、本当に話を聞いても相手は全く分からないのかというと、そんなことはありません。その「つらさ」が全く理解できない、という人はほとんどいません。

もちろん、具体的に何があって、どんなことがつらいのか、それを100%理解することはできませんが、「とにかくつらいんだな」ということは分かります

「そんな状況になったら、確かにしんどいですよね」「眠れなくなるのも当然ですよね」と共感することはできます。

少し極端な言い方かもしれませんが、つらいときに誰かに話を聞いてもらうことの意味は、具体的に何があったのかを相手に理解してもらうことではないと思います。
「そういうことがあって、つらかった自分」そのものを受け止めてもらうことではないでしょうか。

だから、上手に説明できなくてもいいのです。
むしろ、たどたどしくても一生懸命に言葉にしようとする思いこそ、相手に伝わりやすいものです。

まずは、否定せずに話を聞いてくれる人を探し、自分の気持ちを少しずつ伝えてみてください。

私は私でいい、あなたもあなたでいい

人気漫画『ワンピース』は、仲間を大切にするところが大きな魅力の一つではないでしょうか。

おれには強くなんかなくたって一緒にいて欲しい仲間がいるから………!!

おれが誰よりも強くならなきゃ そいつらをみんな失っちまう!!!

(『ワンピース』40巻より)

「強いことが仲間の条件」という価値観のキャラクターもいる中で、主人公のルフィは「強くなんかなくたって一緒にいて欲しい」のが仲間だと言います。

そしてルフィ自身も、「おれは助けてもらわねェと生きていけねェ自信がある!!!」(『ワンピース』10巻より)と言えてしまうところがカッコいいですよね。

そんな言葉に励まされ、成長していく仲間たちの姿に励まされる読者は、私だけではないと思います。

心の豊かな社会、命を大切にする社会とは、苦しみを共有し、共に考え、安心して悩める社会ではないでしょうか。

「私は私でいい、あなたもあなたでいいんだ」

お互いを尊重し合い、支え合って、みんなが幸せになれるような世の中であってほしいなと思います。

 

【参考文献】

・クリスティーン・ネフ著、石村 郁夫・樫村 正美訳(2014年)『セルフ・コンパッション あるがままの自分を受け入れる』、金剛出版
・泉谷閑示著(2006年)『「普通がいい」という病』、講談社現代新書
・水島広子著(2015年)『自己肯定感、持っていますか?』、大和出版

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