情報の80%は目を通して入ってくるといわれます。
それだけ目に頼って生活しているので、見えなくなれば本当に困りますよね。
すべての人に共通して出てくる症状として、老眼があります。
早い人では35歳を過ぎる頃から、「近くが見えにくい」「スマホの字が見にくくなってきた」と感じるといいます。
本屋へ行けば、老眼を治すトレーニングがある、老眼が回復する方法がある、とうたった本が出ていますが、本当に老眼は治るのでしょうか?
眼科専門医の舘(小川)奈保子先生にお聞きしました。
「裸眼で遠くがよく見えている人」「近視のためメガネ、コンタクトレンズで遠くがよく見えるように矯正している人」が、手もとのスマートフォンや書類の文字を見ようとすると見えにくい。
これが、老眼の症状です。
遠くは見えるのに、近くが見えにくくなる理由
なぜ老眼になるのかということは、意外に知られていません。
それは、年齢とともに目の中の水晶体(レンズ)が硬くなるからです。
目は、近くを見るときは、水晶体を引っ張っている毛様体筋という筋肉の輪を小さくして、水晶体を膨らむに任せて厚くし、ピントを合わせています。
逆に、遠くを見るときは、筋肉が緩んで、水晶体を薄く引き伸ばしてピントを合わせています。
若い頃は、水晶体が軟らかいため、遠くも近くも、ぴったりピントが合うように調節できたので、不都合はありませんでした。
ところが、加齢によって水晶体が硬くなると、水晶体が膨らまない(レンズが厚くならない)ので、近くにピントを合わせることができなくなるのです。
筋肉を鍛えれば、老眼は予防できるのか
筋肉(毛様体筋)を鍛えれば老眼を予防できる、という主張もあるようです。
しかし、そうはいきません。
どれだけ毛様体筋を鍛え、ぐっと縮めて水晶体を膨らまそうとしても、水晶体そのものが硬くなっているので、ピントを合わせることはできません。
残念ながら、筋トレで老眼を予防したり改善したりすることはできないのです。
眼科医が勧める老眼対策
老眼の軽い間は、照明を明るくする
明るいと、焦点が合いやすくなります。
老眼の軽い間は、照明を明るくすることで、文字を見えやすくすることができます。
老眼鏡の度数変更は5年ごとに
30センチ以上離さないと文字が読みにくい、と感じるようになったら、近用メガネ(いわゆる老眼鏡)で、見え方を改善することができます。
その後も60歳くらいまで老眼の度は進みます。
度が進んだら、メガネの度数変更が必要です。
目安は5年ごとです。
白内障の手術と一緒に治すことができます
老眼鏡を作る際に、併せて眼科で検診を受けておくと安心です。
老眼は、もっと年齢が進んで白内障が起こってきたときには、白内障の手術と一緒に治すこともできます。
老眼になったら緑内障にも気をつけて
ところで、近くが見えにくい症状はメガネで解決できるのですが、老眼の症状が現れる頃、緑内障という病気が潜んでいることがあります。
緑内障は、失明原因の第一位です。患者は40歳以上の日本人の5パーセントといわれていますが、実は、その9割が、自分が緑内障であることに気がついていません。
自覚症状が出た頃には、かなり進行した状態であることが多いため、無症状の間に発見して治療することが必要です。
老眼かなと思ったら、メガネを買って済ませるのではなく、ぜひ、眼科で検診を受けましょう。
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