「オレは近道が好きじゃから」とは言っても、すべて通らねばならぬ道がある

少々の悪路でも、常に近道を好む男がいた。
宿屋を早朝、急いで用足しせずに出発したので、途中、激しい催便に悩まされた。
幸い野原へさしかかったので、適当な所がないかと探しながら行くと、道端に手ごろな穴がある。
周囲を見ても誰もいないので〝この穴で用足ししよう〟と心を決めた。
ちょうど、昼時、どこかで昼食にしようと思っていた男は、同時に済まして先を急ごうと考えた。
入れるのと出すのを一緒に済まそうというワケだ。

穴をまたいで、持参のおにぎりを食べながら、男は気持ち良く用便した。
ところが、好事、魔多しと言うか、穴の底には蜂の巣があったのだ。
平和な家庭へドカドカと臭いモノが落ちてくる。
蜂たちが一斉に怒った。
早速、出口に舞い上がって見ると、変な口からまた落ちそうになっている同類の一物を発見。
現行犯逮捕よろしく、特に軟らかそうな所を選んで、思いっきりハチの一刺しを敢行する。
驚くまいことか飛び上がった男は、思わず食べていたおにぎりを不覚にも穴に落としてしまった。
拾ってみても、どうにもならぬ変わり果てたおにぎりを、ガッカリ顔で見ていた男は、
〝うまくやった〟
とやがて手を打って喜んだという。

「どうせ食べても腹を通して肛門から、やがてここへ落とすのじゃ。オレは近道が好きじゃから」

一日の労働を終え独身男が帰宅すると、隣から大好物のおはぎが五つも届けられる。
ひどく腹ペコだった彼は、早速五個のおはぎをペロリと平らげ大いに満腹した。
ところが男は、そのとき、
「しまった。初めの四個を食べずに五つ目を最初に食べれば満腹できて、後でまた四個食べられたのに……」
と言って悔しがったという。

しかし、そんなわけにはいかぬ。
すべて通らねばならぬ道がある

(『新装版 光に向かって123のこころのタネ』p.137-139 著:高森顕徹)

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