1万年堂出版が開催した
読者感想文コンクールの
入賞作品の一部をご紹介します。

銅賞

『子育てハッピーアドバイス 大好き!が伝わる ほめ方・叱り方』を読んで

薗部由美恵さん(28歳・山口県) 一般の部

「何回同じこと言ったら分かるの! やめなさい! いい加減にしなさい!」

3歳5カ月と生後9カ月になる、2人の娘を持つ今の私の口癖だ。

3歳の娘に対して出るこの言葉。そんな自分に嫌気が差していた時、この本と出会った。本屋に行っても、いつも行くのは、3歳の娘が行く絵本のコーナー。 そこで主人が本を見る間、絵本に見入る娘を見ながら子守りをする。それが、2児の母となった今の私の本屋での過ごし方だ。主人が私にも、「自分の好きな本 を見ては」と勧めてはくれるが、子守りに疲れ、子供もぐずり、いつも諦め、帰宅する。

その日は、レジの近くに置いてあったこの本がふと目に入り、自然と手を伸ばしていた。日々待ったなしの、まさに今、24時間毎日続く育児に対する不安や 苛立ち、焦りや葛藤する気持ちがそこにはあった。3歳の娘との接し方に悩んでいた私にとって、何か答えが見つかるかもしれない。そんな心の叫びが私と本を 結びつけたような気がした。

娘たちが寝静まったその日の夜、何度も読み返しながら自分を諭すように読んだ。読み終えると、何かとても心が軽くなっていた。そして、娘の顔が見たくな り、寝ている我が子のもとへと自然と向かっていた。寝ている娘たちの顔を見て、おでこを撫でながら涙がこぼれた。「ごめんね。ごめんね」と、溢れ出てくる 涙を止めることができなかった。そして何より娘が愛しいと思う気持ちでいっぱいだった。

私がいつも娘に苛立ち怒鳴っていたことの大半が、命に関わることではない、親にとって不都合なことであることに本を読んで気づかされた。娘ではなく自分 が自己中心的になっていたことを、本は教えてくれた。うまく会話ができるようになり、時には大人びたことを言う娘に、いつしかできて当たり前と、考えるよ うになっていた。それ故に、できないことに苛立っていた。しかし、できなくて当たり前、それが子供だと本より教えられてからは、今の娘を素直にありのまま 受け止めなくてはと思えるようになった。

翌日、さっそく実践してみた。昨日あれだけ受け止めよう、できなくて当たり前なんだと自分自身に言い聞かせたのに、どうしても娘の困った行動ばかりが目 についてしまう。口に食べ物を入れたまま噛まずに一向に食事が進まない。汚い物を触る。同じことを何度注意しても止めずに繰り返す。私の感情はイライラと 高ぶるばかりで、大声を出して感情をむき出しにして叱りたい気持ちが溢れてくる。その気持ちを抑えることで精一杯だった。命に関わる危険なことをした時 は、どうしていけないかを説明し目を見てしっかり叱った。それ以外のことに関しては、私の気持ちを娘に伝えて、後は娘のしたいようにさせ放っておいた。

だが、やはり1度気持ちを伝えるだけでは、娘は素知らぬ顔。しかし、放っておくことで、私のイライラとした気持ちは落ち着き冷静になることができた。そして、自分自身が冷静になれたら、何度も何度も根気よく娘に声をかけた。

すべてがうまく行く訳では決してなかったが、感情的に怒らないことで娘も私の声に素直に耳を向けてくれているようだった。そして、娘の良い所に目を向け ようと努力した。些細なことでも、「ありがとう」と手を止めて気持ちを伝えた。「ありがとう」と言った時の、はにかんだ、照れくさそうな娘の顔が今でも忘 れられない。「ありがとう」と何度も伝えて行くうちに、不意に娘に「ママの笑った顔が好き」といわれた。うれしい気持ちと同時に、今までよほど怖い形相を していたんだと気づかされ、娘をギュッと抱きしめて言った。「ありがとう。ママもみいちゃんの笑った顔が好き」と。

それから、日々奮闘した育児が続く今日。やはり気持ちを維持することは容易いことではない。思うように行かないことは多く、怒りで感情が高ぶることもし ばしばある。そこで私は、この本を常に目の付く所へ置くことにした。本が目に入ることで、冷静さを取り戻すことができ、感情にまかせて叱ることを避けるこ とができた。

まだまだ私の母としての人生は始まったばかり。これから先、娘の成長に合わせていろいろな壁にぶつかることだろう。そんな時は、明橋先生の言葉にあるよ うに、「子育ては、一人の人間を育てるという、りっぱな仕事」であることに自信と誇りを持って、娘と共に成長して行けたらと思う。そしていつの日か、「楽 しい子育てだったな」と思えるような人生にしたい。

悩んだり、苦しい気持ちになった時、それは私だけではないこともまた、本より知った。多くの人の力と知恵を借りて、母として、そして一人の人間として強くありたいと思う。

そして何より、私の母がそうであったように、子供たちが明るく笑って過ごせるような居心地の良い、いつも温かで寛大な母船のような存在になりたいと私は思う。