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「死にたい」「消えたい」気持ちがなくならないあなたへ:精神科医のメッセージ

「死にたい」「消えたい」という気持ちが、心の奥でずっとくすぶり続けている。

「なぜ自分は生きなければならないのだろう」

そんな誰にも打ち明けられない思いを一人で抱え込み、相談する相手も見つからないまま、深い虚無感に包まれている方がいらっしゃるかもしれません。

この記事は、そんなあなたへ送るメッセージです。

(1万年堂ライフ編集部より)

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    「死にたい」「消えたい」気持ちがずっと続いています。生きる意味もわからず、誰にも相談できないし、どうしたらいいかわかりません。

はじめに:自分でも、どうにもならないツラさ

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「死にたい」「消えたい」と思えてきてしまうこと、ありますよね。

そんなとき、どうしたらいいか分からなくなるのは、ある意味で当然かもしれません。

「死にたい」という訴えを聞くと、過酷な状況を必死で生き延びてこられたんだろうなと頭が下がる思いがします。

もし一時的な落ち込みならば、気分転換したり、「きっとそのうちいいことあるよ」などの励ましで気持ちが軽くなることもあるかもしれません。

けれど、「死にたい」「消えたい」気持ちがなかなか消えてくれない。ちょっと治まってもまた浮かんできてしまう。振り払いたくても無くなってくれない。

そんなふうに自分自身が振り回されてしまっているような状態ならば、それはもう一時的なものではなく、暗闇の中でさまよっているような状態なのではないでしょうか。

「死にたい」気持ちが強いときは、誰かに聞いてもらいたくても、うまく話せないかもしれません。

「何がつらいのかも、つらいのかどうかも分からなくなってきた」ということもあります。

苦しみが深くなると、言葉でどう表現したらいいのかも分からなくなり、「死にたい」以外の言葉が見つからなくなることは珍しくありません。

「死にたい」「消えたい」は、凍りつき反応の特徴の一つ

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死にたいくらいつらい気持ちになっているとき――。

そこにはきっと、様々な「どうにもならない苦しみ」があったのではないかと思います。

ちょっと嫌なことがあったくらいでは、そこまで気持ちが追い詰められることはありません。

きっと、がまんしても、乗り越えようとしてもどうにもならなかった。

誰かに相談もしにくいし、一人で耐えるしかない。

そんなどうしようもなさの積み重ねがあったのだと思います。

そんなとき、人の心と体は、ある意味で「生き延びるための防衛反応」としての「凍りつきモード」に入ることがあります。

たとえば、ジャングルで突然トラに遭遇したときのように、戦うこともできず、逃げることもできず、固まって動けなくなる。そんなふうに、心も体も凍りついてしまうような感覚です。

このような「凍りつき」は、人が強いストレスやトラウマにさらされたときに起こる、本能的な防衛反応の一つです。

私たちの自律神経系が、自分を守ろうとして感情をマヒさせたり、思考を止めたり、とにかく「感じすぎて壊れてしまわないように」とブレーキをかけるのです。

ただ、このモードは、決して「ラク」な状態ではありません。

感情も思考もはたらかず、でもネガティブな考えばかりが浮かび、ただじっと苦しさに耐えている。

そんな状態が続くと、「もういっそ全部消えてほしい」「死んでしまいたい」と思えてくるのも、無理はないことです。

でも、こうした気持ちは、そう思おうとしているわけではなく、「もうこれ以上、生きていくのがつらすぎる」「この苦しみから逃れたい」という、心と体からの切実なSOSなのだと思います。

「死にたい」の中の、揺れる気持ち

「死にたいけれど、死ぬのも怖い」

そんな気持ちの間で揺れている人も少なくありません。

別に生きる意味があるわけじゃない、でも何となく死ぬのは怖い。
死んだらどうなるのかもわからないから、消極的な理由で生きているだけ。

そうやって苦しみに耐えて、何のために生きるのか、考えてもわからない。

色々な問いが浮かんでも答えは見つからず、苦しみから逃れたくても逃げられない。

八方ふさがりの中で、同じようなことが頭をグルグル駆け回る。

反芻される苦しみは、出口の見えない迷路をさまようようだといわれます。

ただそれは、言葉にしたいけれどもうまく表現できないもどかしさであり、なんとか現状を変えたいともがく、心の奥底からの必死な叫びなのかもしれません。

凍りつき反応には、小さく、少しずつ、ゆっくりのケアを

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何とかしたいけど、なんともできない。そんなときは、小さなケアを意識してみてはどうでしょうか。

弱めの、小さな動きこそが、凍りついた神経系にとってはちょうどいい(心地よい)からです。

それは、体調が悪いときに、重湯やおかゆのようなものしか食べられないのと同じです。

心をほぐすときは、まずは固まった体をゆるめてみましょう。

  • 例えば、何か飲んだり、少し食べたりしてみる。リンゴやミカンなどの果物や、ハーブティなど香りがいいものがあれば、ただそのにおいを嗅いでみるのもいいかもしれません。
  • 今の呼吸に、意識を向けてみる。もし浅ければ、すこし長く吐いてみる。
  • 入浴や足湯で体を温めたり、手や足をマッサージして、心地よいポイントを探してみる。
  • 聞きなれた歌、お気に入りの歌詞を口ずさむのもお勧めです。
  • 座りながら、身体を少し揺らしてみる。
  • 鎖骨をトントントンと、タッピングしてみる。

これらもできない・すぐには効果を感じられないこともあると思います。今はできなくても、いつかふと思い出してもらえたら、それだけで充分です。

さいごに:安心して「死にたい」と言える場所がもっと必要です

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そして願わくば、誰かと、どこかで、つながれるといいですよね。

その際には、自分ではうまく言えなければ、この記事で思い当たることがあれば、これを聞いてほしい人に読んでもらうのもいいかもしれません。記事や本は、自分の気持ちを言葉にしたり、代弁してもらって気持ちを伝えるという使い方もあります。

自殺対策として色々なことが言われますが、その一つとして、安心して「死にたい」と言える場所が、もっと増えてほしいと思っています。安直な励ましなどせず、否定せずにちゃんと話を聞いてくれるところが、もっと必要です。

これは心の強さとかそういう問題ではなく、誰もが抱えうるツラさであり、誰にとっても他人事ではないと思うからです。

幼少期から逆境の中で生き延びてきた人もいれば、予期せぬ病気やケガ、思わぬトラブルや災難に巻き込まれてしまうこともあります。ずっと順調で平和に暮らせればいいですが、そういう人の方が少ないはずです。

自分のことは自分で責任をもつ自立した生き方も大事ですが、人は一人では生きていけないし、困ったときはお互い様です。

「死にたいくらいつらい」「生きる意味がわからない」という切実な問いを発する人がいるから、日常に埋もれていた大切なことに気づかされることもあります。

安心して「死にたい」と言えたり、「生きる意味がわからない」ツラさを吐き出したり、話し合える場が少しでも増え、互いに支え合える社会になってほしいと願っています。

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【編集部より】生きる意味を見つけるヒント

『苦しくともなぜ生きる』には、あなたの心にそっと寄り添い、前に進むためのヒントが詰まっています。

もしかしたら、あなたの心が少しだけ軽くなるきっかけが見つかるかもしれません。

※左から右へページをめくるようにお読みください。

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