一日、数分間の努力の差が、勝利をもたらす 寸暇を惜しんだガーフィールド

「勉強する時間がない」と、嘆いていないだろうか。
 昔から、「一寸の光陰軽んずべからず」といわれている。
「ほんのちょっとの時間でも、無駄にしてはならない」という戒めである。

 アメリカのガーフィールドは、まさに、寸暇を惜しんで勉学に励んだ人である。幼いころに父を亡くし、一家は、極度に貧しかった。
 学費を工面する余裕はない。だが彼は、高等学校への入学を決意した。

 まず、校長に面会を申し込み、志を述べている。
「私は、ぜひ、あなたの学校で学びたい。しかし、家庭の事情で、親から一セントの学費ももらえません。
 はなはだ厚かましいお願いですが、私を校務員に採用して、日中だけでも、勉強させていただけないでしょうか」

 熱意に打たれた校長は、即座に受け入れてくれた。
 彼は、毎朝五時から、校内の掃除を始める。日中は授業に参加し、放課後、再び夜遅くまで全校舎の掃除をするのが日課になった。
 厳しい労働の合間、わずかな時間を惜しんで彼は、一心不乱に勉学を続けた。
 学生の中で、自由になる時間が一番少ないはずなのに、ガーフィールドの成績は、常に学内トップであった。

 大学へ進んでも、熱烈な勉学ぶりは変わらなかった。成績は抜群である。
 しかし、どうしても数学は一番になれなかった。同じ寮で生活している友人に負けてしまうのである。
「全力を尽くしているのに、どうしてだろう……」
 彼は、思い悩んだ。

 ある日、いつものように、消灯時間が近づいたのでベッドに入ろうとしたが、なんとなく、ライバルが気になる。
 友人の部屋の辺りに目をやると、まだ明かりがついているではないか。
「やはり、僕よりも長く勉強していたのだ……」
 彼は、明かりが消えるのを待つことにした。
 しかし、それは、ほんの数分間の差でしかなかった。
「これだ! このわずかな違いが、原因だったのだ」

 次の晩から彼は、友人よりも数分間、遅く寝ることにした。その分だけ多く勉強したのである。
 この結果は、たちまち成績の上に表れた。見事にライバルを打ち破ったのである。

 努力の積み重ねによって、ガーフィールドは、四十九歳の時に、アメリカ合衆国第二十代大統領に就任した。
 彼は、学生時代を回想して、こう語っている。
「数学のテストで一番になったことなど、ささいなことだと笑われるかもしれない。しかし、私にとっては、得難い体験だった。
 わずかな時間を活用することが、いかに大きな結果をもたらすか。その証拠を、眼前に突きつけられたのだ。
 私は、この時、いかなる種類の戦いにも勝利を得る秘訣を知った。
 それは、たとえわずかな時間でも活用するぞ、という熱意である



*ジェームズ・ガーフィールド(1831‐1881)アメリカ合衆国20代大統領。



(『新装版 こころの道』p.43-46 編著:木村耕一)

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