己を変えれば、夫も妻も子供もみな変わる

 禅僧・盤珪が雲水のころである。
 毎夜、千住の磔柱のもとにいって座禅をしていた。
 ある朝、座をたち、近くの馬場の土手で休んでいると、一人の立派な武士が、馬のけいこにやってきた。
 それとなく見ていると、どうやら馬のごきげんが悪く、武士の思うようにならぬらしい。
 どなりながら武士は、しきりに馬を責めている。
 それをみた盤珪。
「なんのざまだ!」
と大喝した。

 それを耳にもかけぬふうに武士は、ますます馬に鞭をあてる。
「ええ、なんのざまだ!」
 二度三度の大声に、ようやくふりかえった武士は、馬から飛び下り、静かに盤珪に近づいてきた。
「貴僧は先ほどから、どうやら拙者を叱っておられるようだが、教えることあらば、承りとう存ずる」
 すこぶる言葉は丁寧だが、返答次第によっては、の気迫がありありとうかがえる。

 毅然とそのとき、こう盤珪は諭した。
「馬がいうことをきかぬといって、馬ばかりを責めるのは、いたって愚かなこと。馬にも馬の事情があるはず。
 馬にいうことをきかそうと思うなら、馬がいうことをきくように、しむけてやらなくてはならぬ。
 まず、自分を改めることが一番じゃ。おわかりかな」

 謙虚で賢明な武士であったのだろう。
 深くうなずき一礼して退き、態度を改め、ふたたび馬上の人となった。
 ところがどうだろう。
 馬が変わったように、騎手の命ずるままになったではないか。
 私がこうなるのは、夫が、妻が、子供が悪いからだと、他人ばかりを責めている間は、真の平和は訪れない。
 まず自分を反省し、己の姿勢を正すことが肝要。

 己を変えれば、夫も妻も子供も、みな変わる。
 家庭も明転すること、うけあいだ。

(『新装版 光に向かって100の花束』p.135-137 著:高森顕徹)

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