迷うことなく自分の道を進んでゆくということは、なかなかに難しい

 ある晩、ネズミが桶の中に落ちた。とびあがって出ようと、最初は、おおいに努力したが、桶が深くてとても無理だった。
 そこで今度は、桶の側を食い破って出ようとかじり始めた。
 しばらくやっても、どうも側の木が厚くて硬くて食い破れそうもない。
 あわてたネズミは、場所をかえて、またかじる。
 ところが、やっぱりだめだった。そこでその場所をあきらめて、また次の場所に移った。しかし、ぶ厚い木は、なかなか、食い破れそうもなかった。
 さんざんに、報われることのない努力をしたネズミは、とうとう明け方近く、心身ともに疲れはてて、むなしく死んでいった。
 はじめ、かじり始めた箇所を、最後までかじり続けておれば、桶の側の板に、通りぬける穴ができたものを。
 世間には、このネズミを笑えない人が多い。
 一つのことに失敗して、また他のことに失敗し、転々と自分の仕事をかえてゆく人は、薄志弱行といわれる。

 もっとも、人間というものは強いものではない。
 迷うことなく自分の道に進んでゆくということは、なかなかに難しい。固い意志と、たゆまぬ努力が必要だ。

 迷えば迷うほど努力がむだになると知ったら、最初に熟慮して決断し、断固努力で突きぬけるがよい。

 入り口のほうは、とても入る余地のないようにこんでいる満員電車でも、奥へ入ってゆけば案外すいているものだ。
 入り口がふさがっているからといって、断じて絶望してはならない。

 西洋の、ことわざにあるではないか。
『転がる石には、苔が生えぬ』

(『新装版 光に向かって100の花束』p.121-122 著:高森顕徹)

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