ひょっとしたら、ぼくはこの家の、本当の子じゃないのかも…… ドラえもん「ぼくの生まれた日」


藤子・F・不二雄の人気マンガ『ドラえもん』に、「ぼくの生まれた日」と題する小話がある。

小学生の「のび太」は、母親から「勉強! 勉強!」と、あまりにもブツブツ言われるので、うんざりしている。
勉強せずに遊びに行こうとすると、両親から厳しく叱られ、泣きの涙……。

のび太は、親を恨んでしまう。

「ひょっとしたら、そうだ!! きっとそうなんだ!! ぼくはこの家のほんとの子じゃないんだ。どこかでひろわれたんだ。ほんとの子なら、あんなひどいおこられかたしないよ」

ネコ型ロボットのドラえもんは、なだめながら、
「じゃあたしかめようよ、タイムマシンで。きみの生まれた日へいこう」
と言って、タイムマシンに乗り、二人は、十年前へ飛んだ。

*     *     *     *     *     *

子供が生まれたと聞いて、父親は、うれしくてたまらない様子だ。会社を早退して病院へ駆けつけている。
病院では両親とも、赤子を前にして、とっても幸せそう……。

父「おばあちゃんは? ずっとつきそっていたんだろ」
母「ご先祖にほうこくするんだって、帰ったわ。あなたと入れちがいになったのね」
父「よろこんでたろ」
母「もう、顔じゅうくしゃくしゃにして……。ところでこの子、どんな名まえにする?」

父「ちゃんとね、考えてあるんだ。『のび太』野比のび太! いい名だろ。
名まえの意味? もちろんあるよ。すこやかに大きく、どこまでも、のびてほしいというねがいをこめた名まえだよ」
母「いい子にそだってほしいわ」
父「いい子にきまってるさ。きみににたら、成績ゆうしゅううたがいなし!」
母「あなたににたら、運動ならなんでもこいのスポーツマン」
父「学者になるかな、せい治家になるかな」
母「芸じゅつ家もいいわね、絵でもちょうこくでも音楽でも」

父「なんでもいい。社会のために役立つ人間になってくれれば」
母「思いやりがあって勇かんで、明るく男らしくたくましく、清く正しく美しく……」

のび太は、自分が、いかに家族から祝福されて誕生したかを知った。
自分の将来を、心から心配し、楽しみにしている父母の真心を、ズッシリと感じ取ることができた。

*     *     *     *     *     *    

タイムマシンで現在に戻ってきた彼は、急に、勉強を始めた。夜遅くなってもやめない。
今度は、両親そろって勉強部屋へ行き、「からだをこわすから、もうねなさいってば」と心配している。

厳しく叱られる時もある。優しくいたわってくださる時もある。
いずれも、子供の将来を思う親心に、変わりはない。


*藤子・F・不二雄(一九三三‐一九九六)昭和・平成の漫画家。富山県生まれ。

(『新装版 親のこころ』p.102-104 編著:木村耕一)

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