母親の涙には、化学では分析できない深い愛情がある ファラデーの研究室
イギリスの大科学者、マイケル・ファラデーは、母親思いであった。
貧しい家庭に生まれた彼は、母の苦労を見て育った。
満足に学校へ行くお金もない。
しかし、製本屋で働きながら、科学への関心が高まっていった。
彼は、自分が製本した電気、化学に関する本を片っ端から読んで勉学したという。
その努力と熱意が認められ、二十一歳の時に、王立研究所の助手に採用されたのである。
これをきっかけにファラデーは、世界的な科学者へと成長していく。数多くの発見は、今日の我々の生活にも応用されている。
例えば、洗濯機、掃除機などの便利な電化製品に不可欠なモーターの原理を発見したのが、彼である。
ファラデーのもとには、その名声を慕って、多くの学生が集まった。
ある日、彼は研究室に学生を集め、一本の試験管をかざして、
「この中に少量の液体が入っている。何だと思う?」
と聞いた。ざわついて答えがまとまらない。
ファラデーは、
「先程、ある学生のお母さんが、私のところへ来られた。子供のことが心配のあまり、涙を流して語っていかれた。母親の愛情の深さには、本当に心を打たれるものがある。その時の涙が、この試験管の中に入っている」
と説明した。
意外な展開に、学生たちは静まり返ってしまった。
ファラデーは続けて、こう言ったという。
「確かに涙を化学的に分析すれば、少量の塩分と水分にすぎない。しかし、母親の涙の中には、化学も分析しえない、深い愛情がこもっていることを知らねばならぬ」
世の中には、言葉や数字などでは到底表せないものがある。いちばん身近な「親の心」を、どれだけ知ろうと努力しているだろうか。
*マイケル・ファラデー(1971‐1867)
(『新装版 親のこころ』p.90-91 編著:木村耕一)
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