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最近、とある会社が行った「仕事の悩みランキング」の調査が話題になっています。

仕事の悩みは人それぞれだと思っていましたが、 驚くことに、20代~50代のすべての世代で1位になったのが「給与が低い」という回答でした。

また、育児や教育にお金がかかる時期になると、定年まで会社が存続してくれるかどうか、不安になる人も多くいるようです。

昔は、一流企業に就職すれば将来は安泰でしたが、今は、先が見えず、すぐに辞めてしまう若者も増えていますよね。

私たちの人生にとって、仕事は大切なものです。 しかし、本当にやりがいを持って働いている人は、どれくらいいるのでしょうか?

哲学者・伊藤健太郎先生に「仕事」の哲学についてお話をお聞きしました。

「人生100年時代」に突入し、何のために働くのか、目的を明確にすることが一層、必要になっています。
「仕事」の意味を哲学しましょう。

 

出世したところで、将来が安泰とはいえない

─今日のテーマは「仕事」ですね。日本では、終身雇用が長く続いてきましたが、最近は会社に見切りをつけて、すぐに転職する若者が増えているように思います。

はい。日本では戦後、終身雇用年功序列がセットで広がりました。
会社に尽くしていれば、定年まで面倒を見てもらえるという安心感があったのです。

それだけに、自分の健康も家庭も顧みず、がむしゃらに働くサラリーマンも少なくありませんでした。

それらの人たちは「企業戦士」「モーレツ社員」と呼ばれ、日本の経済成長を支える人材として重宝されていました。

しかし1990年代初頭にバブルが崩壊してからは、長期の不景気が続き、終身雇用は見直しを迫られます。能力主義成果主義の激戦の火蓋が切られたのです。

─会社には4とおりの「ジンザイ」がいる、と言った人もいるそうですね。

そうです。宝といわれる「人財」はごくわずか。

まずは社の目的を理解し、歯車(材料)として役立つ「人材」になるよう、カツを入れられます。
さもなくば猫がいるよりはまし、いちおう人間がいるかな、という程度の「人在」どまりです。

リストラすべき「人罪」は誰かとなった時、にわかに「管理職フヨウ論」が浮上します。
仕事には役立たない(不用)のだから、会社が養う(扶養)ことは「不要」だ、と標的にされるのです。

20年、30年と会社に身をささげてきたのに、これから子どもの教育費もかかる、ローンの返済もある、医療費もかさむという大事な時に、突然解雇になる悲劇があとを絶ちません。

─もし自分が、と思うと不安でたまりませんね……。中高年になってから新たな就職先を探すのは、なかなか難しいのではないでしょうか。

そうですね。経営者の側に立てば分かることですが、どうせ新たな人を雇って教育するなら、すぐ定年になってしまう人より、若い人を選ぶでしょう。

なかなか再就職ができないと、自分はどこからも必要とされていないという感覚に襲われます。
会社の重役だった人が、大学生と一緒にアルバイトをしなければならないこともあるのです。地位のあった人ほど、収入は激減し、精神的にも経済的にも苦境に立たされます。

─それに、たとえ解雇されなくても、会社がいつまでも存続する保証はありませんよね。

はい。世の中の変化が激しいので、時代遅れになった企業は淘汰されていきます。

倒産した会社の平均寿命はどんどん短くなり、2020年は、23.3歳でした。

その一方で、私たちの働く年月は着実に長くなっています。
2013年に定年年齢が60歳から65歳へ引き上げられることが決まりましたが、この流れは止まりません。

やがて定年は70代、80代となり、50年以上は働くのが当然という時代が来るでしょう。
たとえ脚光を浴びるような会社に入社できても、30年後、40年後には、会社そのものがなくなっているかもしれないのです。

─もはや勤め先で「出世」したところで、将来が安泰とはいえませんね。働く意欲が減るのは当然のように思います。

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ギャラップ社(米国)が全世界1,300万人を対象にした調査(2017年発表)では、日本の企業には「熱意あふれる社員」が6パーセントしかいませんでした。

アメリカの32パーセントと比べて大幅に低く、ほぼ世界最下位です。これが2021年には、5パーセントにまで下がっています。

やりがいをもって働くにはどうすればよいか、考えていきましょう。

(『月刊なぜ生きる』令和5年5月号「私たちは、なぜ生きるのか」より)

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伊藤健太郎先生、ありがとうございました。

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