「でもね、あなたはやがて死ぬんだよ……」と魂がささやく

 阪神大震災で瓦礫の山となった街に、多くの救助隊やボランティアが、必死の救援活動に挺身しました。
 壊れた家の軒下から、九死に一生助け出されたときは、「良かった良かった」と泣いて喜び祝福されたのに、「あのとき、死んでいればよかった」と、プレハブ生活の六十七歳の男性が、みずから命を絶っています。
 同じ道を選んだ人は、一人や二人ではありません。
「なぜ、ここにいるのだろう」「こんな生活、つづけないといけないのかな」と、よく漏らしていたそうです。
 不幸や悲しみの壁にぶつかったとき、強烈に「なぜ生きる」と、問わずにはいられなくなります。
「人生の目的は何ですか」というエッセイが、法人資料に掲載されました。
「資格を取った」「習い事を始めた」という年賀状をもらうと、わりきれない思いがすると言っています。

 資格を取ったり習い事をしたり、健康であることは確かに人生を豊かにする大きな要素の一つではあるでしょう。
 しかし、それはわかるんだが、でもね、あなたは死ぬんだよ、やがて死ぬんだよ、という魂の奥底からのささやきはないのでしょうか。
(中略)
 子供に学費がまだかかるから、人並みな生活を送りたいから、たまにはゴルフを楽しみたいから、プライドを保つためには、飲みにも行きたいし、旅行もたまには、……。
 そういう理由をつけて、本当に死ぬまで、人生の目的を考えることを先へ先へと押しやりながら結局は死んで行く、という人生を歩んでいるのではないか、という恐れがあります。
(田中鶴昭「人生の目的は何ですか」平成十一年三月・建設物価調査会会計検査資料)

「子供の学費がいるから」「ゴルフもしたいし、旅行もたまには」と、言い訳やごまかしをくり返しても、
「死がそこまで迫っているのに、趣味にうつつをぬかしていてよいのか」
「人生の目的を考えずに死んで悔いなしか」
という不安は、だんだん大きくなります。
 虫歯の初期はたまにシミる程度ですが、症状が進行して、あるとき痛くて眠れなくなるようなものです。
 幸せ求めて生きているのに、もっとも忌み嫌う墓場に突進している以上の矛盾はありません。生きるために生きる人は、〝死〟を目的に生きているようなものでしょう。
「臨終に、すべては台無しになる。報われる苦労はないのか」
「死の滝壺に、なんの準備もせずに飛び込んだら一大事」
「いま、なすべきことは何か」
 百パーセント確実な未来を直視したとき、人生最大の問題と対峙させられるのです。

 (『なぜ生きる』p.99-100 著:明橋大二・伊藤健太郎、監修:高森顕徹)

『なぜ生きる』書籍紹介

子供から大人まで、多くの人に勇気と元気を与えている書籍です。
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