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この夏公開された、話題の映画『君たちはどう生きるか』の公開をきっかけに、全国で「なぜ生きるか」について考える声も上がっています。

しかし、私たちが、「何のために生きるのか」を知る前には、まず、知らなければならないことがあるそうです。
哲学者・伊藤健太郎先生にお話をお聞きしました。

自分ほど、分からないものはない

私が生きる目的を知るには、「私」とは何かを知らなければなりません。
自分のことは自分がいちばん知っていると思いがちですが、本当でしょうか。

ニーチェ(ドイツの哲学者)が「おのれ自身にもっとも遠い者」は自分だと言っているように、自己ほど分からないものはないのです。

──まず、「私」について知ることが大切なんですね。自分のことが分からないなんて、一体どういうことでしょうか。

そもそも、私はなぜ、この世に生まれてきたのでしょうか。
両親がいたからです。では父と母はなぜ、生まれたのか。それぞれに親(私から見れば祖父母)がいたからです。

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──たしかに、祖父母にもそれぞれ両親がいて、そのまた親にも……。段々と気が遠くなってきました。

はるか700万年前まで先祖をたどると、アフリカに誕生した最初の人類に行き着きますが、
彼らは身長といい脳の大きさといい、今のチンパンジーとほぼ同じなので、およそ人間には見えないでしょう。

──そういえば、学校で習ったような。でも、アフリカで人類が生まれたと言われても、とても自分の祖先とは思えません。

そうですね。しかし、さらに祖先をさかのぼると、もはや哺乳類でもなくなり、約40億年前に存在していた、一つの生物にたどり着きます。
それこそ、地球に存在するあらゆる生き物の先祖です。

生物学では、LUCA(最終共通祖先)と名づけられています。
人間から動物、植物、昆虫、細菌に至るまで、生きとし生けるものは皆、このLUCAの子孫なのです。

裏を返せば、一切の生物は私たちの兄弟であり、親戚ということになります。

──すべての生き物が、共通の親を持っているとは、驚きです!

では、そのLUCAは、どうして生まれたのでしょうか。地球があったからです。では、地球が約46憶前に誕生した原因は何でしょうか。

──あわわわわ……。なんだか壮大な話になってきました……!

自分が今、呼吸をしているのは、何でもないことのようですが、その原因は無数にあります。大宇宙が、総掛かりになっているのです。
私一人に、138億年の歴史が収まっています。私という人間が存在するためには、全宇宙が必要なのです。

──伊藤健太郎先生、ありがとうございました! 「私」が生きていることは当たり前ではなく、様々な原因があってのことと、少しずつ分かってきました。

(『月刊なぜ生きる』8月号「私たちは、なぜ生きるのか」より)

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今回ご紹介した内容の続きは、最新号の『月刊なぜ生きる』8月号に掲載されています。

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