日本人はアメリカなどの国と比べて、ネガティブな発言をする人が多いといわれますよね。
日本は個を主張しない文化なので、控えめに表現しがちです。
ほめても、「いやいや私なんぞ、たまたま運が良かっただけで」など言って、へりくだります。
よく言えば謙虚ですが、悪く言えば消極的でネガティブ思考であり、もっと自信を持ってもいいのに、と思うときもありますよね。
功罪はあると思いますが、前向きな発言はとても大事だと仏教では教えられています。
それはなぜか、塾長から学んでみましょう。
![]() キャシー
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仏教塾に学びに来ている、日本が大好きなアメリカ出身の英語教師。アニメが好きで、アニメから日本語を学んだ。今回は留学生時代のエピソード。 |
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![]() 店長
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カフェいろはの店長。美味しいコーヒーを淹れてくれる。塾長(高杉小五郎)とは大学時代からの友人。 |
![]() 塾長
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仏教塾いろはの塾長。アメリカの大学で仏教の講義をしていた。店長(原田健太)とは旧知の仲。 |
カフェいろはで話をしている英語教師のキャシーと、原田店長。
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日本人って、『私ってホント駄目で…』と自分を低くする言動が多いデスネ?アメリカでは考えられないワ―。
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そうだね。日本では昔から、自分を低くして謙虚な態度をとることが美徳とされているよね。
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自分を上げると『あの人はビックマウスだ』と非難する人もいマスネ…。でも、後ろ向きな発言をしていくと、本当に悪い結果になることもあるんじゃないカシラ…。ポジティブに発言することで、やる気も起きて、物事も良い方向に進むものだと思うワ。
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確かに、言葉の持つ力は大きくて、前向きな発言をするままが、前向きな思考、行動につながっていくことがあるよね。仏教でも、前向きな発言をすることがとても大事だと、教えられているよ。それについて塾長から聞いてみよう。
一流の選手は、言葉で自己を律している
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仏教で「言葉」についてどう教えられているか、お話ししますね。
メンタルトレーニングのスキルのひとつに、「セルフトーク」というものがあります。
「セルフトーク」とは、「自己会話」といって、自分自身に対してかける言葉のことです。
言葉と心はつながっているので、前向きな言葉を自己に語ることで気持ちが高まり、高いパフォーマンスを発揮できるといわれています。
トップアスリートの中には、試合前にトイレに行って鏡を見ながら
「俺はできる」
「今日も調子がいい」
といったような言葉を自分に言い聞かせる選手も多くいるそうです。
先日開催された平昌五輪の男子フィギュアスケートで2連覇を果たした羽生結弦選手も、メディアに対し常に前向きな発言をしていたことが印象的でした。
オリンピックの4か月前に右足首を怪我し、全日本選手権も欠場。
氷上で本格的な練習を再開したのは今年1月で、不安や焦りが募る中、「僕はどんなことがあってもやる。絶対に勝つ」と周囲に宣言し、自分を律していたそうです。
落ち込んでいるときや不安なときほど、
「OK」
「楽しい」
「できる!」
など、強気・前向き・やる気が出る言葉を繰り返し発することで前向きな気持ちとなり、前向きな行動につながっていくのですね。
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平昌五輪、私も見てマシタ。「セルフトーク」も羽生選手の活躍に役立っていたのデスネ。
仏教でも大事にされる、口の行いとは?
仏教では、私達に現れる結果はすべて自分の行いによって決まる、と教えられます。
日常でも耳にする「自業自得」や「因果応報」という言葉は、そういうことを教えられた仏教の言葉です。
私達の結果を決める「行い」にも3つあり、それは心の行い、身体の行い、口の行いです。
つまり、心で何を思うか、身体で何をするか、そして口で何を言うかで、私達の結果は大きく変わるということですね。
だから、日々どんな発言をするかは、良い結果に恵まれるためにとても大事なことです。
『こころの道』という本には、口の行いの大切さを教えた、幕末に活躍した藩士・高杉晋作のエピソードが書かれています。
「困った、という言葉を、決して吐かない」
これが、絶体絶命のピンチを、何度も鮮やかに切り抜けた、高杉晋作の秘訣であった。
いかなる窮地に陥っても、「なんとしても打開してみせる」という、前向きな気持ちを持ち続ければ、必ず、意外な方向に活路が見えてくる。「窮すれば通ず」といわれる通りだ。
反対に、「困った」という後ろ向きな言葉を吐いたとたんに、知恵も分別も出なくなる。窮地が死地になってしまい、それで本当に終わりになるのだ。
高杉は、長州藩の同志に、常に、このように語っていたという。
幕末における高杉の活躍は、めざましかった。
よい例が、幕府艦隊との海戦である。
徳川幕府は、長州藩を攻略しようと、千トン級の軍艦を中心とする大艦隊を派遣した。
これに対し、長州にはまともな軍艦がない。誰もが「困った」「とても勝ち目がない」と騒いでいた。
急報に接するや、高杉は直ちに「幕府艦隊に海戦を挑む」と宣言し、わずか二百トンの豆軍艦一隻で出撃した。従った若者たちも、この命令には度肝を抜かれたという。
海戦に夜襲は不可能というのが世界の常識であった。だが、高杉率いる豆軍艦は、深夜の奇襲作戦を敢行した。大島沖に停泊していた軍艦、無数の帆船、和船は大混乱を起こし、見事、勝利を収めている。単なる無謀ではない。活路を見いだすべく熟慮したうえでの断行であった。
「困った、という言葉を、決して吐かない」
このプラス思考が、己をも前向きにし、周りの人をも奮起させる原動力であったのだ。
(『こころの道』木村耕一著 より引用)
ネガティブ思考もまったく良くないというわけではありません。
ネガティブだからこそ、物事の達成を阻もうとする障害にも目が届き、対策を立てられることもあります。
問題は、最初から「困った」「できない」という極端なネガティブ思考ですね。
これでは先のエピソードのように、窮地が死地になり、終わってしまいます。
「出来る出来ぬは論の外」といわれます。
行く手を阻む障害を熟慮したうえで、常に前向きな言葉を発することで窮地も打開し、明るい未来が切り開かれるでしょう。
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「ジゴウジトク」(自業自得)には、「結果はすべて自分の行いによる」という意味があったのデスネ!身体だけでなく、口の行いってやっぱり大事デスネ。
前向きな発言を続けるための「コツ」とは?
「前向きな発言が良い結果をもたらす」とはいっても、生きているといろいろな困難も出てきます。
やっぱりつらいときや余裕のないときは、どんなに「前向きな発言をしよう!」と思っても、苦しくてなかなか言えないものですね。
仏教では、私達の心を「機」と表されます。
「機」とは機械のこと。すべての機械は外から働きかけられて動き出します。
ちょうどそのように私達の心も外からの作用によってどうにでも動き出すので、「機」と言われるそうです。
「心」の由来も、決意したこともすぐに「コロコロ」変わってしまうところから、「ココロ」となったとか(諸説あり)。
人間の心は、それほど変わりやすく弱いものです。
特に日本人は、放っておくと、どんどんネガティブになっていく人が多いと思います。
だからこそ、どんな人と接するか、どんな環境に身を置くか、が大切になります。
お釈迦様の教えをやさしく解説された『幸せのタネをまくと幸せの花が咲く』には、このように書かれています。
私たちはどんな人に出会うかで人生がガラリと変わります。
自分に自信がなくても、自分を理解して励ましてくれる人に出会えば、人生は好転します。逆に、才能や能力に恵まれていても、努力を軽視する環境にいれば、せっかくの才能を生かせないまま、一生を送ってしまいます。
あなたの能力や才能を生かし、よい結果を手に入れるためには、今いる環境が自分にとってよいかどうかを考えてみましょう。
(『幸せのタネをまくと幸せの花が咲く』岡本一志著 より引用)
才能を伸ばすには、今いる環境より一回り背伸びしないといけない環境に身を置きなさい、とよく言われます。
明るく前向きな発言が多い人、頑張っている人、自分より能力のある人の中にいると、「自分も努力しよう」と前向きになれますよね。前向きな発言も増えていくでしょう。
また、自分がつらいときに励まし元気づけてくれる人の存在も大事です。一人で悶々と考えていると、さらに気持ちがマイナスに働いてしまうものですよね。
そんなときに、本当に自分の幸せを願っている人に相談することで心がスッキリし、「また頑張ろう」と力が湧いてくるものです。
元気になれる環境を選び、前向きな言葉を自分にも周囲にもかけ続けていけば、結果も良いほうへ好転するはずです。心がけていきたいですね。
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前向きな発言をしていくことが大事な根拠が、よくワカリマシタ。どんな環境に身を置くかも重要なことなんデスネ。
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そうだね。後ろ向きな発言ばかりだと、さらに落ち込んでしまうもの。良い環境を選び、前向きな発言を心掛けて、努力していきたいですね!
まとめ
- 日本人は特にネガティブ発言が多いといわれます。しかし「セルフトーク」といわれる自分への前向き発言によって気持ちも前向きになり、高いパフォーマンスを発揮できることがあります
- 仏教では、「日々どんなことを言うかで私達に現れる結果は異なってくる」と、前向き発言によって良い結果がもたらされることを教えられています
- 人間の心は変わりやすく弱いもの。だからこそ、自分を前向きにしてくれる環境に身を置き、信頼できる人に近づき相談していくことも大事です