老健
(全国老人保健
施設協会の機関誌)
(H20年5月号)
BOOK REVIEW
人間は何のために
勉強し、働き、
物をつくるのだろうか
なぜ生きる
明橋大二、
伊藤健太郎
著
次のような母と子の会話がある。
母:遊んでばかりいないで勉強しなさい。 子:何のために勉強するの。 母:いい高校、いい大学へ入るためよ。 子:何のためにいい大学へ入るの。 母:いい会社へ就職するためよ。 子:いい会社へ就職するとどうなるの。 母:お金がたくさんもらえるよ。 子:そうなると、どうなるの。 母:無理して働かなくても、遊んで暮らすことができるよ。 子:それなら今の僕と同じではないか。
これは、笑い話であるが笑えない一面もある。本著は7年前の刊行ながら現在も売れ続け、58万部を突破するベストセラーとなっている。著者は、精神科医と哲学者。現代に直面するさまざまな問題を中心に、文学者や思想家の人生論を掘りさげ、人気歌手の言葉を引用し生きる理由を探る。親鸞聖人の“なぜ生きるか”の解答に焦点を絞り「教行信証」、「歎異鈔」を読み込むことを通し、古今東西、変わらぬ人生の目的を明らかにしている。
人間は何のために勉強し、働き、物をつくるのだろうか。究極の目的は便利で快適な生活のため。科学や文明が進歩し、そこに人類のパラダイスを描く。食べ物は何でもあり、働く必要はなく、毎日のんびり遊んで暮らす。仕事はロボットがやってくれる。
だがそれが本当に幸せなことなのか。むしろ多くの人は、退屈で飽きがくる。何のために生きるのかを見失うに違いない。私たちが必死で求めているパラダイスは、到達するとそこに「不幸」という文字が刻まれている。一種のパラドックス(逆説)のなかに人間の進歩はある。人は目標よりも、それに向かう過程のなかに、本当の幸せを見出す生き物なのだ。青い鳥は未来ではなく、手もとにある。
評者
山本惠子
全老健広報・情報部会