全私学新聞
(H13年5月23日)
読書――教育現場に
おすすめします
なぜ生きる
高森 顕徹監修
明橋 大二
伊藤 健太郎著
親鸞が説く人生の目的
精神科医・明橋大二、哲学者・伊藤健太郎の両氏が殺人や自殺が絶えない暗い世相をとらえ、親鸞の教えに照らして光明を探る。そして、最大の原因は多くの人々が「人生の目的」が見いだせずに生きていることであると指摘する。人生哲学を持ち、あるいは他人にその大切さを教えていくことの重要性を説く。
「家庭の問題だ、教育の欠陥だ、少年法が悪い、病んでいる社会……解説は十人十色です。しかし『苦しくとも、生きなければならぬ理由は何か』、肝心の『人生の目的』が抜け落ちた議論がつづくだけでは、対策も立てようがないでしょう」(第一部2章「人命は地球より重い」より)。
親鸞の教えを言い表す言葉では「悪人正機」などが知られるが、現代人の虚栄心や、正義を貫けず簡単に妥協してしまう弱さを改めて知らしめるために、多くの言葉を現代語訳して引用している。そして、本書の後段では、人生の目的は人それぞれに何かを信じることであるという結論も記した。「亀を助けた浦島太郎は、肩に魚釣竿をかついでいた」「ウソくらべ 死にたがる婆 とめる嫁」……。各章で端的に示される業の数々に、我が身を振り返って考えさせられる。