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食べ物ばかりでなく、
人生なにごとも
七、八分が良い
織田信長が尾張から決起して天下を取り、京都へ乗り込んで、
羽振りを利かしていた頃である。
厨房役を引き受けていた料理人は、八十六歳の老人だった。
ある日、信長がこの老料理人を呼んで尋ねた。
「貴様は八十六歳だというに、すこぶる達者だが、何か健康法でもあるのか」
「畏れ入ります。私はただ、料理人なるがゆえに達者でございます」
「それはまた、どういうワケだ。世間でよく料理人は先に、いろんなおいしいものを食い荒らすから余計に短命だと聞いているが、その方はどうじゃ」
「私は長い間料理一筋務めまして、儀式か何かの場合によく鶴を使います。他の鳥は、胃袋がはち切れるほど食っておりますが、この鳥はいつ料理いたしましても、胃袋には七分しか食べ物が入っておりませぬ。
鶴の長命はこれに限る、人間も食べ過ぎてはいかぬと知らされ、私は常に七、八分より食べないことにしております。
これは始終手にかけた鶴に教えられたことで、おかげで長命を保っております」
と答えたという。