ある日、1万年堂出版にCDが数枚届きました。早速、聴いてみると、なんと、NHKのテレビやラジオでよく耳にする和田篤アナウンサーの声。しかも、『なぜ生きる』の朗読でした。
監修、著者の先生方も大変喜ばれ、朗読版の制作がスタートしたのです。
全編朗読に約7時間。超大作と言っても過言ではありません。完成間近の平成14年10月初め、料理番組『ごちそう賛歌』のナレーションを収録中の和田篤さんをNHKに訪ねました。

──『なぜ生きる』を朗読しようとされたきっかけは?
和田家内から頼まれましてね。「ああ、いいよ」と、軽く引き受けました。ヒマを見つけて録音してやろうと思ったのです。ところが、読み始めて驚きました。内容が濃い。「おまえ、ちょっと待っていてくれ。2、3回、練習して録音できる本じゃない」と言いました。
黙読を2回してから、「声に出して10回は練習しよう」と思いました。スタジオを借りて、「それじゃ、本格的に取ってやるからな」と、始めたのです。
──奥様からお話があったのは、いつごろですか。
和田『なぜ生きる』が出版されて、すぐでした。家内は、高森先生の著書の大ファンですから。
録音を始めて、自分なりに完成するまで、約10カ月かかりましたね。それから修正にまた半年……。
──奥様への深い愛情から、この大部な作品が誕生したのですね。『なぜ生きる』を通して、一番感じられたことは。
和田読んでいて、気持ちがよかった。とても読みやすい文章です。
──声に出して読むのに適しているのですか。
和田そうです。リズムがある。語りかけるような調子で書かれています。
──語りかける調子とは。
和田名文といわれる大作家の文章にもリズムがあります。しかしそれは、黙読に適したリズムです。
逆説的に言えば、名文は、声に出して読んでも、あまり心に残りません。名文は読みにくい。読みやすいのは、心がこもっている文章です。
『なぜ生きる』には、読む人に分かってもらいたい、という気持ちが、全体にみなぎっています。そこが非常にいい。本当に、読んでもらいたい、という気持ちが入っている本ですね。
──完成まで、どんな苦労が?
和田この本には、親鸞聖人のお言葉が、やさしく解説されています。でも、その簡単な言葉の、底の底の意味まで分からなければ、適切な朗読はできない、と思いました。かなり難しくて、お手上げだという所も……。
しかし、どう読むべきかは、すべて、高森先生が教えてくださいました。
──最も印象に残っている所は。
和田大きな船に乗せていただくくだり、「大悲の願船に乗じて……」ですね。苦労して苦労して、何回も何回も、親鸞聖人はどういうことを言っておられるのか、著者は何を言いたいのか、考えました。
──読者に望まれることは。
和田仏教に関する部分は、初めは間違った読み方をいくつかしていましたが、高森先生に直していただきました。読み方としては完璧なはずです。自信をもって言えます。『なぜ生きる』を見ながら、この朗読を聴いていただくと、より分かりやすくなるのではないでしょうか。