子どもが、こんなことを
言い始めたら
どうしますか
特別寄稿
『10代からの子育てハッピーアドバイス』
に書き切れなかったこと
明橋大二
- 叱ったり、注意したりする前に、大切なことがあります
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明橋大二医師真生会富山病院心療内科部長
児童相談所嘱託医
小学校スクールカウンセラー
思春期の子どもさんをお持ちのお父さん、お母さんへ向けて『10代からの子育てハッピーアドバイス』を出版したのは、今年の3月でした。すでに1,000通以上の愛読者カードを頂いています。それを読んで感じるのは、今までにもまして、親自身が、「自分の子ども時代を思い出した」という感想が多いことです。特に、「自分もいじめを受けてつらかった。その傷がまだ癒えていなかったことに気づいた」「初めて、自分は悪くなかったんだ、と思えて楽になった」という感想が少なくありません。改めて、思春期の心の傷が、今の親の心のありようにも、大きく影響しているのだと感じた次第です。
さて、その後の講演での質問などから、この本に書き切れなかったことを、いくつか書いておきたいと思います。
- 外国語を翻訳する気持ちで
- まず、言葉遣いについて。
思春期になると、親に反抗的になります。単に反抗的なだけでなく、言葉も荒くなります。今までは、かわいいかわいいと思って育てていたのに、思春期になると、「うるせえ、ばばあ」「うざい、死ね」「ぶっ殺す」などと言い始めます。女の子でも例外ではありません。
こんな言葉が出てくると、いったい、この子はどうなってしまったのか、と、卒倒しそうになる親御さんも少なくありません。
そもそも、こういう言葉を親に言ってもいいのか、絶対許せん、という考え方もあると思います。しかし、許されない、と叱ったり注意したりするのと、子どもが言うことを聞くのとは別問題です。
「こういう言葉遣いをしてはいけないよ」と教えるのも大切ですが、同時に、今の子どもたちは、こういう言い方をするものなんだ、とひとつ割り切ることも必要ではないかと思っています。
そういう意味では、これも1つの外国語です。ですから、翻訳が必要なのです。
「うるせえ、ばばあ」というのは、「ちょっと口出しはしないでね」ということですし、「うざい、死ね」というのは、「あまり干渉しないでね」ということです。
「ぶっ殺す」というのは、そう言ったからといって、すぐに包丁で刺す、ということではなくて、「それは嫌だから、やめてね」ということです。
それにしても、何という言葉遣い、と思うかもしれませんが、しかし、人類始まって以来、若い人は、上の世代の眉をひそめさせるもの、と相場が決まっているみたいです。
100年前の論文にも、「今の若い者は、言葉遣いがなってない」という記載があります。
100年前の若者、というと、我々のひいおじいちゃん、ひいおばあちゃんの世代です。それが、「言葉遣いがなってない」と言われているのです。我々の子どもだけではないのです。
- 子どもが親に突っかかってきたら
- あと、子どもが、何か、親に突っかかってくる、八つ当たりしてくる、ということがあります。その場合の理由には、2つあります。1つには、親自身の今までの自分に対する接し方に不満があって、その不満を吐き出してくる場合です。「あの時、たたいた」とか、「ほったらかしにしていた」とか、「自分を守ってくれなかった」などです。
そういう場合は、やはり、親にも、落ち度があったな、と認めて、「そうかそうか、気がつかなくて悪かった。あの時は、こういう気持ちだったんだ」というようなことを伝えて話を聞いていくと、それなりに収まってきます。
- 八つ当たりにまともに反応しない
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ところが、いったん収まったと思ったのに、また親に八つ当たりしてくる場合があります。そんなに親が悪いと思えないことでも、やくざがからむみたいに、いちいちケチをつけてくるのです。
そういう時は、実は、親の接し方が悪いのではなく、学校で、人間関係などつらいことがあって(いじめ、孤立しているなど)、そのつらさを、学校では出せないので、家に帰ってから、親に八つ当たりしてきているのです。ですから、そういう場合は、「あんた、最近イライラしてるね。お母さんも悪いかもしれないけど、あなたも何かストレスたまってるんじゃないの?」と聞いてみると、実は、ということで、学校のことを話してくれたりするのです。
そういう時に、子どもの八つ当たりにまともに反応して、「親に対して、その態度は何よ!」と怒ってしまうと、最初は、親が原因ではなかったのに、だんだん、本当に親に対する不満なり、怒りなりに変わってきます。それにまたこっちも反応して、バトルになります。結局、こちらも相手も疲れますし、エネルギーの無駄遣いです。
- 「どうせ」と言う子に、どう接するか
- あと、思春期に、「どうせ」とか言って、自己評価の低い子どもにどういう言葉をかけたらよいか、という質問もありました。
思春期の子どもに対しては、褒め言葉が、うまく入っていきません。自分の関心と別のことを褒められても、しらけるだけ、あるいは、何か裏があるんじゃないか、と勘ぐられるだけです。私は、そういう時、「褒める」より、「認める」だと言っています。
どういうことかというと、子どもがやったことを、そのまま認めていく。50点取ったら、50点分だけ認める。50点なのに、100点のように褒めたり、0点のように否定しない、ということです。
50点は、50点分だけ、70点は70点だけ認める。それ以下でも以上でもない。
そういうことが大事なのだと思います。
- 「ありがとう」を、もっと言おう
- 自己評価を高めるために、思春期の子どもにも有効な褒め言葉があります。それは、「ありがとう」です。
褒めるのはなかなか難しい、という話をしましたが、「ありがとう」という言葉は、いちばん相手が傷つかない褒め言葉で、思春期の子にも有効です。「ありがとう」と言っても、「別に」と返されるのが落ちですが、それでも、そのように言われた子どもは、何かうれしそうです。
「家族なのに、どうしてありがとうなんて、言わなきゃならないんだ」と言うお父さんもあるそうですが、それはちょっと違うと思います。家族であっても、むしろ、家族だからこそ、ちょっとしたことでも、「ありがとう」と言う機会を探していくことが大切なのだと思います。