先日、小学一年の男の子のことで、相談に来られたお母さんがおっしゃいました。
「子どもが、なかなか思うように育ってくれなくて困ってるんです。どうしたらうまく育つんでしょうか」
そこで私は聞いてみました。
「では、お母さんは、どういう子どもに育ってほしいと思いますか?」
お母さんは、ちょっと考え込みました。
「そうですね。私は本当は、ただ健康であってくれればいいと思ってるんです」
「そうですか。じゃあ、健康でさえあればいいですか?」
「そうですね。もちろん、性格も素直で明るい子どもがいいですけど」
「じゃあ、健康で、性格が素直で明るい子なら、それでいいですか」
「そうね。やっぱり、勉強もできないよりできたほうがいいし、時にはお手伝いもしてほしいし、いじめとかに負けない強い子、あと、自分の意思をちゃんと持っている子。思いやりのある子。外でよく遊ぶ子……」
ついつい笑顔になってしまった私を見て、お母さんは言いました。
「ちょっと欲張りすぎですかね」
「というか、ありえないですよね……」
つられて、お母さんも笑いだしました。
自分の意思をちゃんと持っている子は、たいてい素直ではありませんし、外でよく遊んで、なおかつ、お手伝いもして、宿題もする、なんて、ふつう子どもには無理です。
現実にはありえない理想の子どもに、わが子がならないと悩むより、今ある子どもの良さを認めることから始めてみてはどうでしょう。
キレる子どもは、たいてい、本当は、人一倍気を遣う、優しいところを持っています。
言うことを聞かない子どもは、自分の意思をすでにちゃんと持っています。
何事も動作が遅い子どもは、物事にじっくり取り組むタイプかもしれません。
やんちゃな子どもは、今の子どもが忘れた(かもしれない?)元気をいっぱい持っています。
おとなしい子は、人の気づかないことにも気がつく、敏感なところを持っています。
足りないところばかり目について、あれもダメ、これもダメ、と、ついつい言ってしまいます。
でもそうするとそのうち、子どもは、自分の存在自体がダメなんだ、と思ってしまうかもしれません。
ところが、違う目線で子どもを見てみると、あんなに問題児だと見えた子も、なぜかいとおしく、輝いて見えてくるから不思議です。
この本は、これから子育てしようとするお父さん、お母さんに向けて、いろんなヒントを、イラストやマンガの形でわかりやすく描いたものです。
内容は、私が、これまでに書いた子育てシリーズの四冊の中で特に大切なこと、反響が大きかったことを選び、さらに、その後の診療や相談で感じたことを追加しています。
イラスト・マンガを描いてくれたのは、一児の母親でもある、太田知子さんです。太田さんの感覚は素晴らしく、楽しくわかりやすい絵と相まって、とても素敵な本に仕上がりました。
この本が、未来を担う子どもたちの、輝ける子に育つ一助になれば幸いです。
明橋 大二
●はじめにより●